1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610440
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
秋谷 治 一橋大学, 大学院・言語社会研究科, 教授 (20134877)
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Keywords | 説経節 / 説経祭文 / 人形芝居 / 鼓女唄 / 信太妻 |
Research Abstract |
本年度は三年計画の初年度のため台本及び記録資料の概容把握及び既に予備調査を数年来実施してきた音源資料の整理を中心に作業を進めた。その結果、新潟権佐渡郡新穂村瓜生屋611番地霍間幸雄氏旧蔵(同氏は平成8年2月死亡、息和大氏頂蔵及び一部は新穂村資料館寄託)本が江戸時代寛文・延宝期(1660・70年代)の江戸・京出版の説経節台本に由来する、江戸期後半に佐渡島にて転写されたものであること、大きな改編なく出版当初の詞章を90%以上そのまま忠実に伝えているものであること、霍間氏の語り方も義太夫節以前の特色、説経節本来の特色をよく留めているものであること、人形の首及び演じ方においても江戸初期の特長を留めていつ希有なものであることなどが判明した。現在後継者が途絶えているが、古来の説経節を唯一保存伝承してきたものと認められ、早急に後継者育成が図られるべきであるのみならず、その音源の記録収集を行うべきものとの認識を得、鋭意録音収集中である。永久保存を企て、デジタル化の作業を進めている。その一部、霍間氏が語った延宝頃刊「信太妻」第三段、63分分を法政大学多摩地域社会研究センターが企画出版予定の『CD説経節集』(平10年5月刊 8枚組)に参加させていただきコンパクトディスクにレコーディングした。他の音源も300年前の芸能を今日に伝えてきた意義を確実にし、後世に永久に伝えていくためにもこの作業を続行(平10年度・11年度)していく(複製を文化財関係の諸施設において保存をお願いする予定)。 多摩地域に伝わる江戸後期の説経節の一つである説経祭文の調査、音源記録も行った。新潟権上越市・長岡市・刈羽郡に昭40年頃迄伝えられた鼓女唄に影響を及ぼしたこと、神奈川県藤沢市俣野地区の民話にも影響していること等、民衆文化のレベルに広範囲の影響を与えていること等の知見も得た。今後こうした側面への研究も進めねばならないことを予定したい。八王子市で平9年11月、平10年5月に開かれた(3)説経祭文の後継者育成のための発表会及び青年活動にも援助しながら、説経祭文の全体像の把握に努めている。
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