1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610440
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Research Institution | HITOTSUBASHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
秋谷 治 一橋大学, 大学院・言語社会研究科, 教授 (20134877)
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Keywords | 説経節(セッキョウブシ) / 金平節(キンピラブシ) / 説経祭文(セッキョウサイモン) / 説経源氏節(セッキョウゲンジブシ) / 「小栗判官」(オグリハンガン) / 佐渡ヶ島 / 人形芝居 / 語り物 |
Research Abstract |
1.江戸時代より佐渡ヶ島に伝承される説経節の台本調査と語りの録音保存を行なった。霍(つる)間幸雄氏(佐渡郡新穂村・平8年没)旧蔵本及び山本修巳宅(真野町)・中川家(両津市大川)・池田三郎宅(新穂村・故人)他にも説経節及び金平節の台本が遺されていることが判明した。これらの先祖に語り手がおり、説経節「信田妻」が霍間家本以外に2本、「小栗判官」が1本、金平節「太田合戦」が1本、「浜松合戦」が3本他伝存することを見出した。これらの伝存により、江戸時代中期より昭和初まで、佐渡島内で本流であった新穂村の説経以外にも島内各地に語り手がいた歴史を解明する手掛りを得た。又霍間氏の遺した録音資料を収集し、デジタル録音化に努めている。これらの成果の一部として『国文学解釈と鑑賞』1999年8月刊・第64巻8号において、佐渡島の文化を総合的に紹介する特集の一つとして、説経節を中心とする人形芝居の歴史と概観を纏めて発表した。 2.平成10年に引き続き神奈川県には宗教民俗芸能に説経祭文の影響下になるものがあることを見出した。小田原市久野の月並念仏講で歌唱される念仏歌がそれであり、さらに、この歌に登場する静岡県駿東郡小山町新芝の曹洞宗円通寺が説経祭文「小栗判官」の詞章にある鬼鹿毛馬頭観世音と一致することを見出した。これらは資料の残りにくい庶民文化における貴重な資料として江戸後期の説経祭文の伝播状況を解明できるもので、『多摩のあゆみ』第95号で報告した。昨年度の藤沢市の民話の解明・秋田県に伝えられた語り物の紹介とともに、後期説経である説経祭文の歴史的実態が徐々に明らかにできた。 3.名古屋周辺に江戸末期より伝えられた説経源氏節の台本が蓬左文庫の尾崎久弥、旧蔵本12未紹介で数十冊伝えられていることが判明した。目下解析中であるがその半数近くは説経祭文の影響になったものであることが分かりつつある。この他、この地方の最後の太夫であった故岡本美寿松太夫(愛知県甚(さし)目(もく)寺町、服部家)の下にやはり未紹介の台本があることを見出し、それらを比較検討中である。
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