1999 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀における英米と日本のシェイクスピア劇の演出法に関する比較研究
Project/Area Number |
09610477
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
依田 義丸 京都大学, 総合人間学部, 教授 (30135462)
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Keywords | 20世紀 / シェイクスピア劇 / 演出法 / 『タイタス・アンドロニカス』 |
Research Abstract |
今年度は、20世紀の『タイタス・アンドロニカス』の演出法のうち日本に焦点を当てた。具体的には、主に日本におけるこの劇の上演に言及した書物、その上演を取り上げた劇評、演出家たちの演出談や出演した俳優たちの演技談、また舞台づくりに参加したスタッフたちの苦労談などを中心に資料を収集した。こうした資料の整理と分析を進める一方、実際に演出に携わった演出家たちや俳優たちへの直接のインタヴューも試みた。研究を進めるうちにいくつかの問題に遭遇した。一つは、資料をほとんど収集できなかったり、演出家の名前はわかっても、その存在が確認できない上演である。具体的には、1969年の演劇集団華による日本における初上演である。もう一つは、演出家によっては研究の協力を全く得られない場合があることである。要するに、上演によって情報料にあまりにも格差が存在することであった。来年度は、この情報料の均一化を一つの課題としたいと考えている。こうした問題もあったが、七例の上演について分析を進めることができた。この中には、1992年のルーマニア劇団による上演とイギリスの演出家ロン・ダニエルズによる演出の二つが含まれている。分析によって明らかになったことは、外国人による二例を除いて、演出家たちにシェイクスピア劇についての知識不足が認められ、結果としてこの劇が後のよく知られたシェイクスピア劇との類推で解釈され演出されているという共通点があるということである。これに対して、外国人による演出では演出家が作品がシェイクスピア劇全体で占める位置への正しい認識を基盤とされている点が特徴である。外国人による二例の演出との対比によって、日本の演出家たちによる演出の問題点を浮き彫りにすることができた。
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