2000 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀における英米と日本のシェイクスピア劇の演出法に関する比較研究
Project/Area Number |
09610477
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
依田 義丸 京都大学, 総合人間学部, 教授 (30135462)
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Keywords | 20世紀 / シェイクスピア劇 / 演出法 / 『タイタス・アンドロニカス』 |
Research Abstract |
今年度は、過去三年間に行った20世紀における英米日の『タイタス・アンドロニカス』のうち事情によってこれまで吟味できなかったものについてあらためて劇評、関係者からの証言などの収集を行った。その代表的な例は、1969年の劇団華による日本での最初の演出であり、これについては演出家がすでに他界されていることを確認した上で、タイタスを演じた俳優から演出家がこの作品を選んだ経緯から具体的な演出法に至るまで、詳細な説明を聞くことができた。同様に、英米についても、ビーター・ブルック以前の、たとえば、1923年のロバート・アトキンズの演出について資料の収集とその整理・分析を行った。こうした作業の他方では、今年度の主要な目的である、これまで収集した英米と日本の演出法についての資料の最終的な整理と分析を進め、前者と後者についてそれぞれの特色を確定すると共に、それらを相互比較して四年間の研究をまとめることに集中した。結果として、英米の場合、演出家がシェイクスビアに自らのコンセプトを押しつけているタイプと、演出家が劇作家に忠実になろうとするタイプがあり、第一のタイプにもリアリズム派と反リアリズム派があるものの、両者には共通して演出家の独断と作品に対する無理解が認められるものの、具体的な場面の舞台的な効果については正しい認識があって、そのことに、第二のタイプが出現する基盤のあることを明らかにできた。これに対して、日本における演出においても、演出家は独断と作品に対する無理解を示しているものの、具体的な舞台的な効果を見誤っていることで、第二のタイプを生みだす基盤に欠けることをつまびらかにした。
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