1998 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀における英米と日本のシェイクスピア劇の演出法に関する比較研究
Project/Area Number |
09610477
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
依田 義丸 京都大学, 総合人間学部, 教授 (30135462)
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Keywords | 20世紀 / シェイクスピア劇 / 演出法 |
Research Abstract |
今年度は、当初の計面通り、20世紀のシェイクスピア劇の演出法のうちアメリカに焦点を当てた。年度の前半では、アメリカにおける今世紀のシェイクスピア劇のうち、主に『タイタス・アンドロニカス』の上演に関係した書物、そうした上演についての劇評、演出家たちによる演出メモ、出演した俳優の演技談、舞台美術及び音楽についての記録などを中心にした資料を収集した。年度の後半では、主に収集した資料の分析と整理を進めた。具体的には、ジェラルド・フリードマン、ポール・バリー、マーク・ラッカー、レアード・ウィリアムソン、パット・パットンといった演出家の『タイタス・アンドロニカス』の上演を取り上げ、まず、これらの演出家の演出を様式的な演出、リアリズム的な演出、これら2つの折衷的演出の三つのタイプに区分けし、その上で特に残酷的な場面(強姦されたラヴィニアの登場する第二幕第四場、タイタスがアーロンにだまされて手を切り落とされる第三幕第一場、四人の登場人物たちが次々と刺殺される第五幕第三場の大団円の場)について、シェイクスピアがその劇作で示しているねらいである異化効果が実際の舞台でどれだけ忠実に実現されているかを詳しく調べた。また、アメリカの演出例を分析する作業をすすめるうちに、前年度に整理・分析したイギリスの演出例との比較が避けられないことを痛感し、アメリカの演出家による『タイタス・アンドロニカス』の上演を、イギリスの演出家の上演と比較しながら、分析する作業を行った。そして、これらの二国の『タイタス・アンドロニカス』の上演・演出を合わせて分析した結果を1998年10月の日本演劇学会で口頭発表した。
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