1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610519
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
恒川 隆男 明治大学, 文学部, 教授 (60022258)
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Keywords | ヴァイマル共和国 / 失業問題 / ナチ |
Research Abstract |
平成9年度は主としてヴァイマル共和国時代(1919・33)の生活世界についての研究を行った。 ヴァイマル共和国時代は普通は3期に分けわれる。第1期は18年から23年まで、即ち、第1時世界大戦敗戦後から23年の天文学的なインフレがレンテンマルクによって収束される迄であり、革命運動や右翼の騒擾が絶えなかった時代である。第2期は24年から29年まで、よく黄金20年代と言わせる相対的安定期であり、第3期は大恐慌がアメリカからドイツに波及した29年からナチが政権を取る33年迄である。ヴァイマル共和国時代は国民の大多数にとって生活不安の時代であったことが、研究の結果明らかになったように思われる。例えば、ある統計によれば、1887年から1923年まで一番失業率が高かったのは1901年で7.2%であるが、ヴァイマ-ル共和国時代で一番失業率が低いのは相対的安定期の1925年で8.3%である。失業率は29年から上昇し、32年に44.4%に達する。労働者がたえず失業の不安に脅えていること、失業した労働者が物質的のみならず精神的にもひどいダメ-ジを受けることはHabs Falladaの<Kleiner Mann,--was nun>ような小説や,B. Nelissen Hakenの<Stempelchronik>、Siegfried Kracauerの<die Angestellten>ようなルポルタージュに書かれている。だが、ナチが政権を取ると失業者の数は34年にはもう半減し、37年には殆ど消滅してしまう。こうなると、労働者たちのなかにナチを信じ、ナチ党に入党した者が多く出たのも無理もないとも終われる。「無尊、そうしない労働者もいた。だが、彼らもまた反ナチ的な考え方を捨てて、政治的無関心層になったのである。」と、J. Kuczynskiは<Geshichte des Alltags des eutschen Volkes S. 147>に書いている。 ヴァイマル共和国時代の生活世界には興味あるデータがいろいろあるが、問題をアクチュアにとらえるためには、少なくとも同時代の日本との比較が必要であろう。例えば、日独両国のプロレタリヤ文学をできるだけ多く読むこともこの種の研究のためには有効ではないかと思われる。
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