1997 Fiscal Year Annual Research Report
競争原理導入後の電力事業における安定供給の確保と原子力発電の維持をめぐる政策分析
Project/Area Number |
09630060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
野村 宗訓 関西学院大学, 経済学部, 助教授 (00198631)
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Keywords | 民営化・規制緩和 / エネルギー政策 / 発送電分離 / 電力プール・システム / 原子力発電 / ブリティッシュ・エナジ- / 化石燃料賦課金 / ベストミックス |
Research Abstract |
イギリスでは電力事業において競争を機能させる環境が整備され、市場メカニズムを可能な限り利用する措置が採用される方向にある。原子力発電に特化したニュークリア・エレクトリックとスコッティッシュ・ニュークリアを国有企業から民間企業に移行させるプログラムが1995年5月に政府から白書(原子力レビュー)として発表された。その計画によれば、原子力発電に関する再編成を実施した上で、株式売却に基づく民営化が実行される。既存の国有2社は持株会社のもとで1社に集約化され、1995年9月にブリティッシュ・エナジ-という社名に変更され、株式売却により民間企業となった。 従来、電力事業はネットワークに基づく供給方法をとるために自然独占に相当すると考えられ、何らかの政府介入や政府規制の実施が正当化されてきた。しかし1990年以降は、イギリス電力事業が実践的なケースであるが、政府主導の政策に代わって競争指向的な政策が主流となっている。発電部門はネットワークとは独立的に運営しうるので、個々の発電事業者は競争原理に従って行動できる。発電部門への競争導入は一方でコスト削減を通して電力料金の低下に寄与する可能性を含んでいる。しかし、他方でコストに見合わない電源開発や燃料選択は中止されることになる。 原子力発電は国有企業から民間企業への移行と垂直統合型企業に対する発送配電分離措置によって縮小する方向にある。エネルギー分野全体での市場メカニズムの利用という観点からは白書は整合性のとれた結論を導き出した。今後の電力政策はすべて市場に委ねられ、政府が直接介入する余地は安全規制を除いてほとんど残されていない。エネルギーのベスト・ミックスは民間企業による独自の判断に任されており、政府の誘導ではなく経済性・効率性に基づいて市場で決定されることになる。
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Research Products
(1 results)