1998 Fiscal Year Annual Research Report
競争原理導入後の電力事業における安定供給の確保と原子力発電の維持をめぐる政策分析
Project/Area Number |
09630060
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
野村 宗訓 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00198631)
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Keywords | アンバンドリング / 原子力発電 / プール / 再生可能エネルギー / 電源構成 / 垂直統合 / 化石燃料賦課金 / 電力改革 |
Research Abstract |
EUを中心とする欧州の電力事業は1999年から本格的な自由化に入った。英国と北欧は既存企業に対してアンバンドリング(発送配電分離)を適用し、競争的電力市場を創設した。第1の論点はプールの運営方法にある。英国はすべての発電会社が送電会社を介して電力を取り引きする強制プールを採用しているのに対して、北欧は送電会社を介する取引とそれ以外の直接取引の両方を併存させる非強制プールを利用している。英国型プールはカルテルを招きやすく、発電価格の低下につながらない欠点を持つので、北欧型への移行を模索中である。第2の論点は原子力や再生可能エネノレギーの維持である。これらは競争下で新規に開発される見込みが低い。しかし電源構成や環境負荷の観点から、それらの維持妥当性も認められる。英国は化石燃料賦課金を通して競争原理とは異なる理念に基づく特別の手段によって維持してきた。第3の論点は発電と配電の垂直統合である。英国では大手発電会社による配電会社の買収は禁止されてきた。競争的市場を形成しようとするならば、両者は分割されているべきである。だが、貯蔵不可能な電力の効率的取引のために両者は一体化されているべきとの見解も成立する。実際に英国では政策当局の方針が変更され、発電+配電の垂直統合が容認される傾向にある。英国・北欧と異なり、フランスのように国有企業の独占を残しながら、部分的に競争を導入している国もある。その背景には原子力発電を維持しようとする政策的意図がある。当面はフランスが積極的に電力を輸出し、他国がそれに依存する態勢は続くであろう。しかしフランスの原発設備の寿命や各国の政策調和を考慮すると、競争指向を貫いてきた欧州電力政策の見直しも必要である。日本の電力改革では1999年1月に部分自由化の結論が導き出されたが、今後は欧州の実験を参考に長期的視点からの政策運用が求められる。
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Research Products
(1 results)