1997 Fiscal Year Annual Research Report
米国自動車産業におけるマィノリティ層の職場史-戦間期のGM工場のケース-
Project/Area Number |
09630069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
高田 聡 小樽商科大学, 商学部・商学科, 教授 (50187960)
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Keywords | GM / アメリカ史 / 経営史 / 労働史 / 黒人 / CIO / フリント市 / 労使関係 |
Research Abstract |
本研究では1930年代のGM社の城下町(ミシガン州フリント市)における工場職場史、とくに黒人を中心とするマイノリティ現場層の行動規範の解明を試みている。知見は大要以下に整理できる。 1.労務管理者への工場現場層の規範は30年代前半に急速に萎える。代表例として集団ボーナス制度での賃率計算の精緻化への反発があげられる。現場層の多くは精緻化を職長の恣意の跋扈に利する作為的な複雑化とみなし、不満を募らせた。こうした経営への疑念は、30年代半ばの会社組合の衰微、後半のCIOインダストリアル・ユニオニズムの隆盛、こうした労使関係の転換のひとつの遠景となった。 2.現場層自体の行動規範では次の3方向が抽出された。(1)熟練性:熟練という権威は機械化に伴う実体の形骸化を経験しつつも、一定の現場編成能力を維持し続けた。同権威を体現する熟練組合主義は不熟練への訴えに成功したCIOユニオニズムの隆盛を前にしても容易には後退していない。(2)地域・職場生活経験:この経験に由来する集合性・職場規範も高まる。不況下に労働移動が鈍化するなか、地域・職場での面接性を基盤とする相互扶助の意義が高まったためと思われる。(3)ラディカリズム:工場被雇用者としての水平性規範に訴える政治的ラディカリズムは、現場層の一角に深く染みわたった。 3.黒人層は地域・職場に伝統的な規範をひときわ強く抱く集合体であった。実証的な確定が今後の課題だが、次の見方を検証したい。同層は伝統的な、とくに面接的に人的な関係を強化し、その結果、会社ユニオン、熟練組合、ラディカル、いずれの集合体とも接する自由度を保つことができ、諸規範を眺望できる位座を獲得したという点である。この位座が黒人層における固有の協働関係、ひいては現場自治を発展させた可能性が高い。
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