1999 Fiscal Year Annual Research Report
生態学的シミュレーションによる組織間関係の進化の研究
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09630111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 伸夫 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30171507)
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Keywords | 生態学的モデル / 組織内エコロジー / マルチ・エージェント / シミュレーション / 組織間関係 |
Research Abstract |
組織間関係の形成過程を生態学的モデルの観点から分析するために、昨年度、組織内エコロジーの分析が一区切りついたので、今年度はその成果を基にして、組織間エコロジーのコンピュータ・シミュレーションに取りかかった。これまでcellular automataのシミュレーションを想定していたが、様々な角度から検討した結果、組織間関係の分析にはmulti-agent系のコンピュータ・シミュレーションの方が向いていることが明らかになった。遺伝的アルゴリズムやカオス理論と並んで複雑系(complexity)の分野を象徴するものとして知られるmulti-agent系シミュレーションは、1990年代に注目を集めるようになった比較的新しいものだが、幅広い分野で試みられている。シミュレータとしては、複雑系のメッカ、米国SantaFe研究所で開発されたSwarmが有名だが、Swarmのコンセプトを継承しつつ、日本語環境で利用しやすいmulti-agentシミュレータとして開発されたABS(Agent Based Simulator)を使って、現在、multi-agent型のモデルを開発中である。 ここでいうエージェントとは、ユーザの設定したルールに基づいてコンピュータ上で行動する主体を指していて、multi-agent型ではエージェントが複数いて、そのエージェント同士が互いに影響を与え合うことになる。そのため、ルール自体は簡単なものでも、個別エージェントの行動を積み上げた全体では予測できない複雑な動きをすることになる。シミュレーション・モデルはまだ開発途上だが、その途中の成果の一部は、共著の書物「組織と意思決定」の中でも取り上げられる。最終年度である次年度は、multi-agent系のシミュレーション・モデルの開発を終え、組織間関係の形成過程をコミュニケーション競争として説明する理論的フレームワークを完成させたい。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] 高橋伸夫: "「鉄道建設の資金調達スキーム」"『経済学論集』東京大学経済学会. 65巻3号. 52-78 (1999)
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[Publications] 高橋伸夫: "「経営組織論の中のゲーム理論・決定理論」"オペレーションズ・リサーチ. 45巻1号. 4-10 (2000)
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[Publications] 高橋伸夫: "「JR東日本に見る金利との競争」"『総合政策研究』中央大学総合政策学部. 5号(印刷中). (2000)
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[Publications] 高橋伸夫: "「モノの検査からビジネスの検査へ」"『会計検査研究』会計検査院. 21号(印刷中). (2000)
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[Publications] 高橋伸夫: "「ドイツの鉄道改革と資金調達スキーム」"『運輸と経済』運輸調査局. (印刷中). (2000)
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[Publications] Nobuo Takahashi: "Business Administration"An Introductory Bibliography for Japanese Studies (1996-1997). Vol.12,Part 1(in press). (2000)
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[Publications] 高橋伸夫(編著): "生存と多様性―エコロジカル・アプローチー"白桃書房. 254 (1999)
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[Publications] 塩次喜代明・高橋伸夫・小林敏男: "経営管理"有斐閣. 308 (1999)
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[Publications] 高橋伸夫・桑嶋健一: "組織と意思決定"朝倉書店(印刷中). (2000)