1999 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴ礁域貝形虫の殻に見られる捕食痕についての進化古生物学的研究
Project/Area Number |
09640558
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
田吹 亮一 琉球大学, 教育学部, 助教授 (60155231)
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Keywords | サンゴ礁 / 礁池 / 貝形虫 / 捕食者 / 捕食痕 / 飼育実験 / 生態分布 / 海底洞窟 |
Research Abstract |
本研究の主目的はサンゴ礁域貝形虫種の殻に見られる捕食痕の形態の特徴を明らかにし、捕食痕を残した捕食者を特定することにある。 捕食者の特定に関しては、沖縄本島北部の瀬底島周辺の礁池で採取した、貝形虫数種(全て、後述する葉上種)と'捕食者候補'(巻貝、線虫、環形動物)を同居させ、飼育を試みた。水槽の底に藻類が付着したレキを入れたシャーレを置き、その中に貝形虫と捕食者候補を入れ、一定期間、飼育したが、捕食者の特定には至らなかった。本研究により貝形虫の長期の飼育が可能になったので、今後も飼育実験を行い、捕食者を特定したい。瀬底島での調査では、貝形虫の生態分布と捕食痕の形態のタイプとの関連を調べた。その結果、瀬底島の礁池に生息する貝形虫種の殻に見られる捕食痕の形態のタイプーこれまでの本研究により、「パラボラ型」、「円筒型」、「不定形」を識別ーはほとんどが「円筒型」、「不定形」である。昨年の「知念砂層」の化石貝形虫を対象とした本研究では、泥底種の捕食痕はほとんど「パラボラ型」であるのに対し、砂底種、葉上種(海藻、海草に付着して生活する種)のそれは圧倒的に「円筒型」、「不定形」が多いことが明らかになったが、瀬底島の礁池の貝形虫種の底質は砂底又は葉上であることから、昨年の研究結果と整合的である。 又、今回、以前に採取した伊江島東方の水深、約20m付近の海底洞窟、「大洞窟」からの堆積物試料より貝形虫個体(殻)を拾い出し、捕食痕について調べた。同じサンゴ礁内にあっても太陽光が十分通過し、光合成産物を十分利用可能なopen sea海域に比べ、ほとんど真っ暗で貧栄養環境の海底洞窟からの貝形虫の殻には、捕食痕が極めて少なく(Tabuki and Hanai,1999)、その捕食痕の形態のタイプは「円筒型」、「不定形」であることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Tabuki,R.: "A new sigillid ostracod from submarine caves of the Ryukyu Islands,Japan"Palaeontology. Vol.42,Pt.4. 569-593 (1999)