1997 Fiscal Year Annual Research Report
プレセッションカメラ用低温装置の作成とチオ尿素包接化合物の構造相転移の研究
Project/Area Number |
09640604
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 初江 大阪大学, 工学部, 講師 (10029712)
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Keywords | チオ尿素包接化合物 / 構造相転移 / 試料冷却装置 |
Research Abstract |
ある種の小型分子をゲストとするチオ尿素包接化合物は分子間相互作用と物性との関係を調べる上で興味深い。これまでチオ尿素包接化合物の低温相の結晶構造の報告は非常に少ない。それ故、その低温相の構造を明らかにしたいと考え、CBr_4をゲスト分子とするチオ尿素包接化合物を取り上げた。松尾等による(SCN_2H_4)_3・CBr_4に関する熱力学的研究から、秩序無秩序変化によると推定される相転移が、201.75Kに見い出されている。 X線写真法によって低温相の結晶学的研究を行うため、プレセッションカメラ用試料冷却装置を、吉村等の論文に基づいて作成した。冷却方法は低温窒素気流を結晶に吹き付ける方法である。定電流定電圧直流電源を使用して、冷却用窒素ガスとエアーカーテン用窒素ガスをそれぞれジュアーびんから取り出し、結晶に吹き付けた。プレセッションカメラ法はX線の照射時間が短いため、冷却用窒素ガスを、途中、液体窒素中を潜らせることによって、通常用いられている温度コントロール装置を使用しなくても、安定した温度の吹き付け用窒素ガスを取り出すことができた。結晶付近の温度はディジタルマルチ温度計によりモニターした。 高温相(SCN_2H_4)_3・CBr_4は三方晶系に属し、空間群はR-3cである。低温相(SCN_2H_4)_3・CBr_4のプレセッション写真では、高温相の場合と同じように、hkl:-h+k+1≠3nの消滅則を示した。しかしながら、高温相の場合、h-h01:h+1≠3n,1≠2nの消滅則が存在するのに対して、低温相では、h-h01:h+1≠3nの消滅則が存在するのみで、1≠2nにも反射が新たに出現した。また、低温相の等価反射は-3mの対称を示した。それ故、可能な空間群R-3m,R3m,R32,R3cのうち、Landau条件を満足する空間群R32が一義的に求められた。今後、反射における非常に小さい分裂の取り扱いについて検討を行い、その結果をふまえて低温相結晶構造を解析したいと考える。
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