1998 Fiscal Year Annual Research Report
プレセッションカメラ用低温装置の作成とチオ尿素包接化合物の構造相転移の研究
Project/Area Number |
09640604
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Research Institution | Oasaka University |
Principal Investigator |
田村 初江 大阪大学, 大学院・工学研究科, 講師 (10029712)
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Keywords | チオ尿素包接化合物 / 構造相転移 / 試料冷却装置 |
Research Abstract |
(CH_4N_2S)_3・CBr_4結晶は無色透明の六角柱状である。高温相結晶は三方晶系で、空間群R-3cである。158Kにおける針状軸方向c^*軸を回転軸とするプレセッション写真を用いて、その消滅則、ラウエ群およびLandau条件から低温相の空間群R32が一義的に求められた。201.75Kにおける相転移が秩序無秩序変化によると仮定すると、チオ尿素が構成する蜂の巣格子は高温相における配置からほとんど変化しないでcBr_4の配向だけが変化すると考えるのが妥当である。この仮定の下に低温相におけるCBr_4の配向を考えた。しかしながら、R32においてもCBr_4のC原子は特殊位置32上に置かなければならないのでCBr_4は必然的に32対称をもつことになり、CBr_4の配向数は高温相の場合と同じ6となる。このことは空間群R32が間違っている可能性を示す。すなわち、c^*軸を回転軸としたプレセッション写真では回折斑点(反射)の分裂を伴わなかったため、そのことを無視したことによると考えられる。 そこで、結晶断面のa^*軸を回転/軸としたプレセッション写真を撮った。(hk0)面の写真では反射の分裂が観測された。なお、この分裂反射は高温相で再び単一反射となった。分裂反射をうまく説明できるような双晶格子をいろいろ検討した結果、ac面を共有した双晶であることが分かった。高温相ではγ^*=60°であるのに対し、低温相ではγ^*=62°となり、単斜晶系となった。消滅則から可能な空間群はc軸を対称軸とするP2,Pm,P2/mとなった。しかし、どの空間群をとるとしても、c軸に平行な2回軸あるいはc軸に垂直な鏡面をもつため、チオ尿素の蜂の巣格子の形成が困難となる。このことから、低温相は単斜晶系ではなく、α^*=β^*=90°の三斜晶系で、対称心を保存したP-1であると考えられる。熱測定から求められた低温相と高温相の分子配同数の比W_h/W_l=3.4を考慮すると、低温相でのCBr_4は2回の無秩序構造をとっていると考えられる。
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