1999 Fiscal Year Annual Research Report
複合運動系を支配する甲殻類口胃神経系の運動パターン切り換え機構
Project/Area Number |
09640807
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
田崎 健郎 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (40031570)
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Keywords | 口胃神経節 / クルマエビ属 / 運動ニューロン / 幽門回路 / 神経伝達物質 / 進化 |
Research Abstract |
甲殻類十脚目の中で最も原始的なクルマエビ属の口胃神経系と筋運動系を用い,胃の構造,運動ニューロンの数,筋の神経支配,神経伝達物質,神経ネットワークなどを軟甲類の動物種間で比較検討した。神経回路は,行動を調節する運動パターン形成するのに,どのように変化し,進化したかを考察した。口胃神経節には,噴門,胃咀嚼器,幽門の運動を調節するニューロンが存在する。これらのニューロンは電気シナプスと抑制化学シナプスによって相互に結合し,それぞれのネットワークを構築する。これらのネットワークは異なったリズムで活動するが,ネットワーク間には相互作用がみられる。幾つかの幽門ニューロンは幽門パターンから噴門パターンに移動する。全ての胃咀嚼器ニューロンは幽門パターンで活動することが出来る。したがって,パターン形成ネットワークは可塑性があり,ニューロンの固有の性質やシナプス強度が変わることによってパターン切り換えが行われるものと考えられる。このように,口胃神経系は多機能的神経回路を構築する。 甲殻類の真軟甲類に属する等脚目は,十脚目とは最も離れたグループである。この目に属するフナムシLigia exoticaの運動ニューロンは,十脚類と同様に,アセチルコリンかグルタミン酸を神経伝達物質として用いている。真軟甲類より原始的な口脚目シャコ Squilla oratoriaではグルタミン酸が伝達物質であり,アセチルコリンは用いられていない。しかし,アセチルコリンの接合部外リセプターは存在する。進化の過程で,真軟甲類ではアセチルコリンが伝達物質として利用されるようになったと考えられる。 複合運動系を構成する4つのサブセット(食道,噴門,胃咀嚼器,幽門)を支配するパターン形成ネットワークの運動ニューロンを固定し,上位中枢の支配下で発生する運動パターンの切り換えを観察している。この方法により,運動パターンの切り換えを示すニューロンを発見することができる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kenro Tazaki: "Neural control of the pyloric region in the foregut of the shrimp penaeus(Decapoda;penaeidae)"Jounal of Comparative PhysiLogy A. 181. 367-382 (1997)
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[Publications] Kenro Tazaki: "Neurotrnsmitters of motor neurons in the stomatogastric ganglion of an isopod crustacean Ligia eyyotca"Comparative Biochemistry and physiology A. 120. 579-586 (1998)
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[Publications] Kenro Tazaki: "multiple motor patterns in the stomatogastric ganglion of the shrimp penaeus japanicus"Jounal of Comparative PhysiLogy A. 186. 105-118 (2000)