1997 Fiscal Year Annual Research Report
マメ科ヌスビトハギ連における生殖器官構造の多様性とその進化の解明
Project/Area Number |
09640821
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
根本 智行 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50228293)
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Keywords | マメ科 / ヌスビトハギ連 / 花序 / 果実 / 形態学 / 器官学 / 解剖学 / 発生学 |
Research Abstract |
マメ科ヌスビトハギ連を対象に、花序と果実の形態の多様性と進化傾向を明らかにするため、形態学、器官学、解剖学および発生学的な解析を行った。 ヌスビトハギ連の花序の形態には、これまで総状花序と偽総状花序が知られている。総状花序をもつナハキハギ属では、種によって花が花序軸のいずれの方向にも配列する「らせん配列」のもの、背軸側に偏って配列する「背軸側偏向配列」、さらに、背軸側偏向配列の後にらせん配列にかわる「移行型」がみられた。一方、偽総状花序をもつその他の属では、花序の主軸につく包葉に抱かれる部分花序で花が「背軸側偏向配列」あるいは「移行型」配列となることが分かった。この特異的な配列から、総状花序は偽総状花序の部分花序と相同であると判明した。したがって、偽総状花序はナハキハギ属でみられるような総状花序をだく葉が包葉に退化することにより進化したものと推定できる。 ヌスビトハギ連植物は果実に折れ易い部位(節)をもち、本研究では果皮と節に着目し、その解剖学的および発生学的解析を行った。ヌスビトハギ連では、一般に、果皮の内表皮のすぐ内側に内表皮由来の厚壁組織が発達するが、ササハギ属では外表皮のすぐ内側に、柔組織から由来する厚壁組織が発達することが分かった。また、節では厚壁組織細胞の形や発達の程度に違いがみられ、5つのタイプと8つのサブタイプを認めた。これらのタイプと分類群との関連を調べた結果、原始的形質を多くもつグループでは、節にも厚壁組織がみられるのに対して、より派生的形質をもつグループでは、節周辺に厚壁組織が発達するものの、ちょうど折れる部位には、厚壁組織が発達せず柔組織のままであることが明らかになった。したがって、厚壁組織の発達する位置や節における発達の程度が、ヌスビトハギ連における分類あるいは進化段階の新しい指標となることがわかった。
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