1997 Fiscal Year Annual Research Report
静磁波ソリトンの実現条件の解明と最適条件における形成
Project/Area Number |
09650062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大川 澄雄 千葉大学, 工学部, 教授 (50009247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 研也 千葉大学, 工学部, 助教授 (90134353)
官 寧 千葉大学, 工学部, 助手 (20234148)
八代 健一郎 千葉大学, 工学部, 助教授 (00125965)
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Keywords | 静磁波 / イットリウム・鉄・ガ-ネット膜 / 包絡線ソリトン / 非線形シュレ-ディンガー方程式 / 磁気共鳴半値幅 / 明るいソリトン / 暗いソリトン / 近接導体板 |
Research Abstract |
イットリウム・鉄・ガ-ネット(YIG)膜を直流磁界により磁化し、YIG膜上に設けたマイクロストリップにマイクロ波を入力すると静磁波を容易に励振できる。YIG膜の損失がなければ、YIG幅1mm当たり数mWの静磁波を励振すれば、ソリトンが形成されるが、実際には損失のためにソリトンにならない。この点から、YIGはマイクロ波の磁気材料として低損失であることが知られているが、静磁波ソリトンの伝搬媒質としては必ずしも損失は小さくない。 短い伝搬距離でソリトンを形成するには、静磁波は近接導体板の影響を強く受けるので、YIG膜に導体板を近づけ、分散の大きいところで、静磁表面波ではおよそ4GHz以上、静磁後進体積波では3GHz以上の周波数を動作点に選ぶ。あるいは、短いパルスにして分散効果を大きくする。静磁波の電力を、分散効果と釣り合う以上に大きくすると、損失効果に打ち勝って静磁波ソリトンらしい振舞いを観測することができる。しかし、静磁波がソリトンらしく振舞うと、減衰の速さが線形のときの2倍近くになるので、エネルギーを速く失うことになり、非線形な振舞いも長く続かない。 非線形シュレ-ディンガー方程式で検討すると、矩形波入力を大きくすると、多ソリトンとして振舞い、ソリトン間の相互作用のため振動しながら伝搬することになる。しかし、静磁波の場合、矩形波入力を大きくしても振動的な振舞いは損失のために観測されない。パルス圧縮への応用を考えると、多ソリトンとして振舞えば、10倍以上の圧縮が可能になるが、単純なスイッチの開閉により入力パルスをつくる方法では、3倍程度の圧縮が限度と思われる。 導体板の影響がないときは、表面波では暗いソリトンになり、前進体積波および後進体積波では明るいソリトンになるが、導体板を近接させて配置することにより、いずれの静磁波でも、明るいソリトンになる周波数範囲および暗いソリトンになる周波数範囲が存在する。今後、このことを実験的に確かめていく予定である。
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