1999 Fiscal Year Annual Research Report
硬質表面薄膜の疲労強度と材料健全性評価に関する研究
Project/Area Number |
09650093
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
小川 武史 青山学院大学, 理工学部, 助教授 (50167318)
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Keywords | 表面薄膜 / 疲労強度 / 材料健全性 / 表面処理 / 溶射 |
Research Abstract |
強度信頼性の向上のためには,溶射皮膜に脆性的な割れが発生する機構の解明とその影響因子について検討することが重要である.特に,片振りの場合の疲労破壊機構においては,溶射皮膜の残留応力が重要な影響因子になると考えられる.アーク溶射やプラズマ溶射法で堆積された皮膜の残留応力発生機構としては,高温スプラットが冷却過程で収縮し,残留応力は引張となることが考えられる.一方,HVOF法の場合には,高速飛行粒子がピーニング効果を生じ,残留応力は圧縮となる.前者は熱残留応力,後者は力学的残留応力と見なされる.事実,WC-12\%Co溶射皮膜においては,HVOF法では圧縮残留応力,減圧プラズマ溶射では引張残留応力となることが報告されている. 本研究では,燃焼圧の異なるHVOF溶射法を用いて,残留応力と弾性特性の異なる3種類のWC-12%Co溶射皮膜を作成し残留応力を評価した.次に,異なる膜厚をもつ溶射試験片に準静的な荷重を与えた時のき裂発生挙動とダイナミックスをAE解析によって調べ,破壊に及ぼす残留応力の影響を検討した.得られた主な結果は以下のとおりである. (1)溶射皮膜の残留応力値は,評価方法によってかなり異なった.しかし,ピーニング効果が大きい溶射条件,すなわち燃焼圧の高いほど,また皮膜厚さが厚いほど大きな圧縮応力が残留することが認められた. (2)薄膜および厚膜試験片ともに,圧縮残留応力が大きいほど最初のAE発生時の公称応力は大きくなる.また,最初のAE発生時の公称応力は,厚膜試験片のほうが同一の圧縮残留応力に対して,大きくなる傾向がある. (3)AE原波形解析によって溶射皮膜に発生する破壊を4つのタイプに分類できた.しかし,本研究の範囲では,破壊機構と残留応力の相関を示す結果は得られなかった.
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[Publications] 石田麻子,小川武史,竹本幹男,小林圭史,原田良夫: "HVOF溶射WC-Co皮膜の残留応力とき裂発生"材料試験技術. 45-1. 289-297 (2000)