1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09650684
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
片寄 俊秀 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (30086417)
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Keywords | 里山保全 / 人口急増地区 / 洪水流出構造変化 / 流域環境保全 / 保水力復活 / 総合治水 / レクリエーション利用 / リピーター |
Research Abstract |
「里山」は一般に人家のすぐ裏山をさし,国土のうちに広大な面積を占め、かっては生産と山遊びなどの場として大いに活用的に保全されてきた空間である。しかし、近年はこうした活用がなされぬまま、一部が住宅地やゴルフ場開発、廃棄物捨て場等に利用される他は、放置され荒廃した状況にあり,これが保水力の低下をもたらして洪水時の出水構造や土石流,斜面崩壊などの発生に甚大な影響を与えている。本研究では、10年間連続で人口増加率が全国一位という兵庫県三田市を含む武庫川流域を主たる研究対象として、「里山」の保全と有効利用を両立させるための整備のあり方を課題として現状調査を進めた。比較対象地区としては、大都市の事例として横浜市と東京都を主たる流域とする鶴見川流域および論者が建設計画に関わった長崎県吉井町牧の岳自然公園を設定し、それぞれ現状調査を進めた。武庫川流域では、大規模な宅地開発とゴルフ場開発が上流域の保水力を低下させ、その結果として下流域の「浸水の恐れのある地域」への洪水災害の脅威が高まっている。洪水対策のためのダム建設が計画されており、これによって流域随一の渓谷景観は壊滅的な打撃を受ける可能性がある。一方鶴見川流域ではすでに開発が成熟段階に達しており、総合治水モデル河川として流域全体での保水力復活事業が盛んに進められている。両流域ともに都市住民による環境のレクリエーション利用への要求が高く、里山保全及び河川環境保全活動そのものをレクリエーションとする新しい動きが生まれている。里山を活用した自然公園の調査結果として、このような環境は利用者数を競うことに意味はなく、リピーター(繰り返し利用者)の定着こそが課題であることが明らかとなり、研究対象流域の環境保全の方向性がみえつつある。
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