1998 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属シリサイドの結晶格子内原子変位と方向性結合
Project/Area Number |
09650716
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田中 克志 京都大学, 工学研究科, 助手 (30236575)
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Keywords | 遷移金属ダイシリサイド / 弾性率 / 構造解析 / 共有結合性 / マキシマムエントロピー法 / 電子密度分布 |
Research Abstract |
まず初めにC11@@S2b@@E2,C40,C54構造を有する遷移金属ダイシリサイドTMSi@@S22@@E2について弾性率測定を行った。弾性率は原子間距離に依存する弾性エネルギー変化と結合角に依存する弾性エネルギー変化の関数として表すことができる。この表式を用いて実測値を再現できるように原子間距離に依存する項と結合角に依存する項の大きさを決定した。これによると,結合の方向性はC11@@S2b@@E2構造を有する物質で最も強いことが明らかとなった。C40構造を有する物質はいずれもC116よりも弱い結合の方向性を示すが,4つの物質の内,CrSi@@S22@@E2とVSi@@S22@@E2は結合の方向性が比較的強い物質,NbSi@@S22@@E2とTaSi@@S22@@E2は方向性が弱い物質と分類されることが示された。C54構造を有するTiSi@@S22@@E2における結合の方向性は,C40構造の2つのグループの中間に位置するものであった。 次いでそれぞれの物質に対してX線回折測定を行った。構造解析の結果,結晶格子内におけるSi原子位置がデータブック集に掲載されている値から僅かながらシフトしていることが明らかになった.このSi原子位置のシフト量は結晶格子が大きくなるとともに大きくなることから,結晶格子の膨張によってもSi-Si原子間があまり広がらないようになっていると考えられる。X線回折強度からマキシマムエントロピー法によって再構成した電子密度分布ではSi原子のシフトによって近づいたSi-Si原子間に過剰な電子の集積が観察され,この原手間に強い共有結合が生じていることが示された。よって構造解析によって示されたSi原子のシフトはTM-SiとSi-Si間の原子間結合の強さの違いによって生じたものと考えられる。
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