1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09660038
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Miyagi Agricultural College |
Principal Investigator |
中村 正博 宮城県農業短期大学, 園芸科, 教授 (30149091)
|
Keywords | クリ開花と花粉発芽 / 花粉発芽調節物質 / 花粉発芽・花粉管伸長抑制 / 花粉管 / フェノール物質 / ポリフェノール / ケイヒ酸 / 花柱抽出液 |
Research Abstract |
クリの雌花は6月中旬乳白色をした花柱の束を突出し、開花が始まる。また、雄花もこのころ開花する。しかし、柱頭での花粉発芽は花柱の突出時から伸長停止期まではまったく起こらない。平成9年度はクリ‘伊吹'を用いて、どのような物質がこうした花粉発芽・花粉管伸長の調節に関わっているのかを検討した。(1)花柱突出時から経時的に採取した雌花をFAAで固定し、各子房ごとに縦断した花柱をアニリンブルーで染色して蛍光顕微鏡下で花粉管を観察した。その結果、6月下旬〜7月初旬ころ花柱上部で発芽した花粉管が見られ始め、7月上旬ころ花粉管が認められた花柱の割合はピークに達した。(2)経時的に採取した雌花の花柱水抽出液を花粉発芽培地に添加し、花粉発芽率・花粉管伸長を調べた。その結果、花粉発芽率・花粉管伸長は中心子房、側子房とも花柱突出時に近いほど抑制が顕著になり、また、花柱の伸長が停止し、花柱上部に花粉管が見られるころ抑制はなくなった。(3)この水抽出液のポリフェノール量をホーリンデニス法で定量した。その結果、中心子房、側子房とも花柱突出まもなくのころポリフェノール量は最も多かった。(4)UV検出器とODSカラムの付いた高速液体クロマトグラフィーを用いて、数種のフェノール物質(タンニン酸、クロロゲン酸、ガ-リック酸、ケイ皮酸、クマリン、O-クマル酸、シキミ酸)についてスタンダードを作り、抽出液におけるそれらの検出を行った。その結果、250nmの波長域でシキミ酸が検出され、かつ、その量は花粉の発芽が抑制された時期に顕著に多かった。(5)花粉発芽培地に、検出されたシキミ酸量と同量のシキミ酸を添加してやると、花粉発芽率は顕著に抑制された。以上のことから、クリの柱頭・花柱における花粉発芽の調節・抑制にはポリフェノール物質、中でもその前駆物質であるシキミ酸が大きく関わっている可能性が考えられた。
|