1997 Fiscal Year Annual Research Report
食物繊維の大腸ガン抑制効果における大腸上皮細胞アポトーシスの役割
Project/Area Number |
09660123
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
葛西 隆則 北海道大学, 農学部, 教授 (80001444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 敏 北海道大学, 農学部, 助手 (00271627)
園山 慶 北海道大学, 農学部, 助手 (90241364)
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Keywords | 食物繊維 / 大腸ガン / アポトーシス / ラット |
Research Abstract |
化学発ガン剤の投与や放射線照射によって数時間のうちに大腸上皮細胞のアポトーシスが誘発されることが知られている。このアポトーシスは遺伝子損傷を受けた細胞を除去する積極的な細胞死と解釈される。本研究では、食物繊維の大腸ガン抑制機構を解明する一環として、食物繊維が発ガンのイニシエーションの段階でのアポトーシスによる遺伝子傷害細胞の除去効率を変化させうるという仮説を立証し、そのメカニズムに関する情報を得ることを目的とした。 動物実験において大腸ガン抑制効果を有することが知られているビ-ト繊維を添加した飼料、あるいは対照として無繊維飼料をラットに1-2週間摂取させた後、化学発ガン剤であるジメチルヒドラジン(DMH)の皮下投与の6時間後、あるいは放射線(^<60>Co)照射の1時間後に結腸を摘出して、組織学的に結腸上皮細胞のアポトーシスを検出した。結腸上皮細胞アポトーシスの頻度は、DMH及び放射線のいずれによって誘発させた場合においてもビ-ト繊維摂取群の方が無繊維飼料摂取群に比べて高い値を示した。増殖細胞核抗原陽性細胞ならびにプロモデオキシウリジン標識細胞を免疫組織学的に検出するとによりアポトーシスと細胞増殖との関連について解析した結果、ビ-ト食物繊維によるアポトーシス頻度の増加は増殖細胞数の増加、即ち高感受性細胞数の増加によるのではないと推測した。以上のことは、遺伝子傷害を生じた細胞のアポトーシスによる除去効率の上昇がビ-ト食物繊維の大腸ガン抑制効果発現に寄与している可能性を示唆している。 現在、アポトーシスの情報伝達径路に位置するp53、bcl-2等の分子の発現のビ-ト食物繊維によるアポトーシス増加への関与について免疫組織学的に検討している。更に今後、ビ-ト食物繊維の効果が腸内発酵産物である短鎖脂肪酸を介したものであるか否かについて外科手術動物等を利用して解析する予定である。
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