1998 Fiscal Year Annual Research Report
食物繊維の大腸ガン抑制効果における大腸上皮細胞アポトーシスの役割
Project/Area Number |
09660123
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
葛西 隆則 北海道大学, 農学部, 教授 (80001444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 敏 北海道大学, 農学部, 助手 (00271627)
園山 慶 北海道大学, 農学部, 助手 (90241364)
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Keywords | 食物繊維 / 大腸ガン / アポトーシス / p53 / アクチビン / p21 / Bax |
Research Abstract |
筆者らのこれまでの研究により、ラットに対する化学発ガン剤の投与や放射線照射の後、数時間のうちに組織学的に検出される大腸上皮細胞のアポトーシスの頻度がビート食物繊維により増加することが示された。このことは、遺伝子損傷を生じた細胞のアポトーシスによる除去効率の上昇がビート食物繊維の大腸ガン抑制効果発現に寄与する可能性を示唆している。そこで本研究では、このような遺伝子損傷後の大腸上皮アポトーシスに関わると考えられる遺伝子の発現動態を解析し、食物繊維による大腸ガン抑制の分子機構を明らかにする端緒とした。 化学発ガン剤であるジメチルヒドラジンをラットに皮下投与後、大腸粘膜のRNAを半定量的RT-PCRにより分析したところ、組織学的にアポトーシスが検出されるのに先だって、ガン抑制遺伝子産物p53の標的遺伝子であるサイクリン依存性キナーゼインヒビターp21ならびにアポトーシス誘導タンパクBaxのmRNAレベルの増加が見られた。更に、TGE-βスーパーファミリーの一員であるアクチビンのβAサブユニットのmRNAレベルも著しい増加を示した。ラット小腸上皮由来正常細胞株IEC-6に遺伝子損傷ストレスとして紫外線を照射した後、経時的に遺伝子発現を解析したところ、βAサブユニットならびにフォリスタチンのmRNAレベルの増加が見られた。以上の結果より、大腸上皮細胞において遺伝子損傷ストレスによりp21ならびにBax遺伝子の発現が増加することが確認され、これらがそれぞれ細胞周期停止ならびにアポトーシスに寄与するものと推測される。更に、遺伝子損傷ストレスによりアクチビン遺伝子の発現が増加することが新たに見出されたが、このものが細胞増殖やアポトーシスにどのように関与するのか、更に食物繊維がこれら遺伝子の発現にいかなる影響を及ぼすのかについては、今後解析していく必要がある。
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