1998 Fiscal Year Annual Research Report
農業構造変動期における継承と相続の地域比較:青森・奈良・鹿児島
Project/Area Number |
09660233
|
Research Institution | IWATE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
玉 真之介 岩手大学, 大学院・連合農学研究科, 教授 (20183072)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 邦裕 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (20167852)
徳永 光俊 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (30180136)
|
Keywords | 経営継承 / 農地相続 / 農家世帯 / 青森県 / 奈良県 / 鹿児島県 / 家族経営 / 法人経営 |
Research Abstract |
日本の農村では、後継者の減少と農業者の高齢化が急速に進行している。その結果として、農業経営の継承と農地相続が日本農業における最重要問題の一つとなっている。しかし、継承や相続につては、地域によって歴史的な異なった慣習や社会規範が指摘されてきた。また、都市化の影響や農業経営の形態も地域的に多様である。 この研究の目的は、継承と相続の問題が、地域的に画一的ではなく、多様性をもっていることを明らかにすることである。この目的のために、我々は3つの対照的な調査地を選んだ。1つは、青森県で、家の後継者は長男による単独相続が支配的な地域である。2つ目は、奈良県で、後継者は長男に限られず、単独相続の規範も完全ではない地域である。3つ目は、鹿児島県で、農地は息子による均分相続で経営は末子に譲られる地域である。 調査と分析の結果は、以下のような点である。第1に、継承については、経営形態の違いによって多様化する傾向にある。家族農業においては、血縁者による継承が一般的であるが、経営が法人化された場合には、後継者は血縁者に限られることなく、事業継承は一般の中小企業と似たものとなる。第2に、農地相続についても地域的に見た多様性が特徴と言える。これまで研究者は、戦後の民法が均分相続を定めたことによって、次第に均分相続が一般化すると予想してきた。しかし、農地は農家世帯の生活手段であることから、世帯に残った者による単独相続が依然として支配的である。そこでは社会規範が影響力を維持しており、また、都市化の程度の違いがさらに多様化をもたらしている。
|