1997 Fiscal Year Annual Research Report
低濃度フッ化物の腎機能への影響に関する研究(加齢に伴う腎機能低下との相互影響)
Project/Area Number |
09670369
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
河野 公一 大阪医科大学, 医学部, 教授 (30111016)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土手 友太郎 大阪医科大学, 医学部, 講師 (10257868)
渡辺 美鈴 大阪医科大学, 医学部, 構師 (30084924)
織田 行雄 大阪医科大学, 医学部, 講師 (80247840)
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Keywords | フッ化物 / 腎毒性 / 腎機能障害 / 近位尿細管 |
Research Abstract |
フッ化物取扱い作業者では、生体に対して様々な影響が報告されている。体内に取り込まれたフッ素(F)は、ほとんどが腎臓から排泄されるため、腎毒性に関する報告も多い。本研究では、フッ化物暴露の腎への影響について、近年、近位尿細管障害の指標として注目されているα-glutathion-S-transferase(GST)を中心に、creatinine(Cr)やN-acetyl-β-D-glucosaminidase(NAG)などの腎機能障害指標や、尿中フッ素排泄との関係を検索した。 8週齢のWistar系SPF雄性ラットにフッ化ナトリウム(NaF、Fとして0.135mg/g)を経口投与した。その後2週間にわたり代謝ケージにて24時間尿を採取するとともに、各項目の分析を行った。尿中GSTはELISA法、尿中NAGはMCP-NAG法、尿中クレアチニンはJaffe法、尿中F量はイオン電極法にて分析した。統計的検定の有意水準はP<0.05とした。 F投与後2日間にわたり顕著な尿量の増加がみられたが、その後徐々に投与前値に戻った。尿中F量は投与後1日目は急激な増加を示すが5日後には前値に近い値にまで戻った。尿中NAGは投与後1日目に急速な増加を認めたが、2日目以降前値とほぼ同じ値を推移した。尿中クレアチニンは投与後1日目に低下したものの、2日目以降実験期間を通して正常範囲内であった。尿中GSTは投与後第1日目に急激な上昇を来し、以後7日間にわたって増加が認められ、10日目に前値にまで回復した。以上の結果はフッ化物の過剰暴露により糸球体からHenle系蹄に至る広範囲の腎機能障害を来すことを示唆するが、特にNAGの変化に比しGSTの変動が長く維持されることは、近位尿細管でも曲部より直部のS3と呼ばれる部位を中心とした障害がより長期に認められることを示すものである。
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