1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09670526
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
伊藤 重二 福井医科大学, 医学部・附属病院, 助手 (30193486)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 胃癌 / 空胞化毒素 |
Research Abstract |
(結果)1997年までに、早期胃癌(m+sm)73例を検討しえた。方法論に基づいて、切除標本から濾紙を用いて粘液を採取、内視鏡的フェノールレッド法に準じて、H.pyloriの分布および癌巣との関係、胃粘膜萎縮との関係を検討した。赤変部位は培養で菌の有無を確認し、また血清IgG抗体価にても感染の有無を検索した。歯の障害因子として、培養された菌の空胞化毒素に注目し、Hela細胞に対する空胞化の有無を検討した。 以上の症例において、H.pylori陽性率は95.9%(分化型93.5%,未分化型100%)と、癌との間に強い関連がみられた。未分化型癌では分化型癌に対し、背景胃粘膜萎縮が弱いものの、幽門部組織に中等度の萎縮腸上皮化生性変化が認められた。また、癌と接する周囲粘膜組織にも分化型、未分化型ともに多くの症例で、中等度以上の萎縮脇上皮化生変化が確認された。一方、分化型癌においては、未分化型に比べ、H.pylori分布が有意に限局、縮小される傾向を認めた。菌の障害因子として、現在までの検討では、空胞化毒素活性が、分化型20/26(76.9%)、未分化型13/19(68.4%)に認められた。 (考察)癌の組織型にかかわらず、高いH.pylori陽性率で、かつ背景の胃粘膜および癌周囲の胃粘膜に中等度以上の萎縮腸上皮化生性変化が認められる事から、H.pyiorlは胃癌発生における初期の萎縮腸上皮化生形成の段階に強くかかわっているのではないか、という事が示唆された。また、空胞化毒素活性陽性率は、萎縮性胃炎由来株とほぼ同程度であり、H.pyloriの有する空胞化毒素が、萎縮の進展から発癌へも関与する可能性が示唆された。今後、さらに、その他の障害因子の検討、および癌症例と年齢性をマッチさせた群における空胞化毒素活性ならびにその他の障害因子について、検討を要すると考えられた。
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