1997 Fiscal Year Annual Research Report
神経疾患における抗神経抗体の検出システムの確立とその認識抗原に関する研究
Project/Area Number |
09670645
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
犬塚 貴 新潟大学, 医学部・附属病院, 講師 (50184734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 亮一 新潟大学, 医学部・附属病院, 助手 (00262444)
保住 功 新潟大学, 医学部・附属病院, 助手 (20242430)
田中 恵子 新潟大学, 医学部・附属病院, 助手 (30217020)
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Keywords | 傍腫瘍性神経症候群 / 抗神経抗体 / 腫瘍マーカー / 自己免疫 / 神経細胞死 |
Research Abstract |
平成9年度には神経組織に対する抗体検索システムとして、ヒト大脳灰白質、白質、マウス小脳、ヒト神経芽細胞腫ライン(NB)、ヒト肝、ヒト坐骨神経を抗原とした免疫ブロット法、ラット/マウス大脳、小脳、肝、場合によってはヒト末梢神経を抗原とした免疫組織化学的方法、リコンビナント蛋白(r-HuD、r-Yo)を抗原としたELISA法を組み合わせて構築した。このシステムを用いて約100例の神経疾患の患者血清中の抗体を検索した。現時点では約10%の症例でヒトの神経系に比較的特異性のある抗体が検出されている。さらに症例を増やしその内容について調べる予定である。 傍腫瘍性神経症候群における抗Hu抗体陽性症例(抗Hu症候群)が、以前からの蓄積例とあわせ21例になり臨床的な解析をおこなった。抗Hu症候群はガン年齢である60才台に多く、臨床型としては感覚障害が多いが多彩であった。肺小細胞癌の合併率が高く、神経症状発現が腫瘍発見に先行することが高率であり、抗Hu抗体の検出が本症の診断や腫瘍検索の契機として有用であると考えられた。また神経症状の治療は困難な例が多かった。後根神経節部を中心とする炎症性の障害として矛盾のない髄液および神経生検の所見を得た。2/3以上の症例ではorgan non-specificな抗核抗体がみられており、今後その発現機序と免疫学的意義について検討する必要がある。 この抗Hu抗体の認識抗原の一つであるHuD分子内にはRNA認識モチーフがあり、翻訳に影響を与えうると考えられることから、抗体による神経傷害の可能性を検討した。患者と対照の血清からIgG分画を精製・濃縮した後、Hu抗原を内在し神経系に分化しうるPC12細胞の培養系へ添加し、培養細胞増加率、死細胞率、細胞構成蛋白泳動パターンを調べた。さらにPC12細胞に顕微鏡観察下にマイクロインジェクターを用いて、IgG分画を直接注入し24時間後の細胞残存率を調べた。いずれも対照との間に明らかな差は認められず、抗体による細胞傷害性は確認できなかった。Lambert-Eaton筋無力症候群以外の傍腫瘍性神経症候群では、抗神経抗体の神経細胞傷害効果は未だ確立されず、細胞性免疫からのアプローチも重要と考えられた。
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[Publications] 犬塚貴: "抗Hu抗体陽性患者IgGのPC12培養細胞への影響" 厚生省免疫神経疾患調査研究班平成8年度研究報告書. 92-94 (1997)
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[Publications] 犬塚貴: "傍腫瘍性神経症候群-癌と神経免疫の接点-" 日本内科学会雑誌. (印刷中).
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[Publications] 犬塚貴: "傍腫瘍性神経症候群" 臨床検査. 1348-1352 (1997)
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[Publications] 犬塚貴: "亜急性小脳変性症" Clin.Neurosci.15. 908-911 (1997)
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[Publications] 犬塚貴: "傍腫瘍性神経症候群と抗amphiphysin抗体" 医学のあゆみ. 180. 708- (1997)
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[Publications] 犬塚貴: "傍腫瘍性神経症候群" 臨床免疫. 29. 1171-1177 (1997)
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[Publications] 犬塚貴: "「Paraneoplastic neurological syndrome」最新内科学大系プログレスシリーズ,神経・筋疾患" (荒木淑郎,金澤一郎,柴崎浩,杉田秀雄編),中山書店, 387 (1998)
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[Publications] 犬塚貴: "「Synaptic proteinsとparaneoplastic neurodegeneiration」Annual Review神経1997" (後藤文男,高倉公朋,木下真男,柳沢信夫編),中外医学社, 311 (1997)