1997 Fiscal Year Annual Research Report
ラットの内耳破壊後に前庭小脳で増加する脱リン酸化酵素の平衡代償における機能解析
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09671743
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 憲昭 大阪大学, 医学部, 助教授 (30206982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木山 博資 旭川医科大学, 教授 (00192021)
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Keywords | 平衡障害 / 前庭代償 / 小脳片葉 / differential display / protein phosphatase |
Research Abstract |
一側の内耳前庭障害の後に発現する著明な平衡障害は、時間の経過とともに次第に軽減してゆく。この前庭代償と呼ばれる現象は、中枢前庭神経系の可塑性に基づく現象である。前庭代償に関連する分子を同定する目的で、ラットの一側内耳破壊後に小脳片葉で転写の促進あるいは抑制を受ける遺伝子をdifferential display法により検索した。ラットの内耳を破壊した後、2日目に小脳片葉を術側、健側に分けて取り出し、さらに正常動物の片葉からそれぞれtotal RNAを抽出した。forwardおよびreverse primerにはそれぞれ全く任意のプライマーを用い、^<32>Pを用いたPCR法により増幅し、その産物をゲル上に電気泳動でdisplayした。PCR産物をフィルム・オートラジオグラフィーにて比較し、正常動物と比較して内耳破壊後の動物の両側小脳片葉で増加しているDNAフラグメントをゲルより採取した。その塩基配列をシークエンスした結果、protein phosphatase 2Aβ catalytic subunit(PP2A)の塩基配列と100%一致した。in situ hybridization組織化学法を行ったところ、PP2Aは小脳片葉もプルキンエ細胞層において発現が上昇していた。また、小脳片葉におけるPP2Aの発現の経時的変化をノザン・プロット法により検討した。PP2Aは内耳破壊後12時間目より発現が上昇し始め、2日目に最高値に達し、2週間以内に元のレベルに戻ることが認められた。PP2Aが中枢神経系のシナプスの長期抑圧現象に関与していることが知られている。また、我々の以前の研究より、前庭代償の初期過程において小脳片葉から前庭神経核への抑制パターンが変化することが重要であることが明らかになった。本研究の結果から、内耳破壊後に小脳片葉で一過性に上昇するPP2Aが前庭神経核に対する抑制パターンの変化に関与している可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 北原糺、武田憲昭、他: "前庭代償における小脳プロテイン・フォスファターゼ2Aの関与・Differential Displayを用いた前庭代償関連因子の検索" 頭頚部自律神経. 11. 8-10 (1997)
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[Publications] Kitahara T, Takeda N, et al.: "Role of the flocculus for the development of vestibular compensation" Neuroscience. 76. 571-580 (1997)
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[Publications] 武田憲昭、北原糺: "前庭代償" Equilibrium Res.56. 306-307 (1997)
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[Publications] Nishiike S, Takeda N, et al.: "Neurons in rostral ventrolateral medulla mediate vestibular inhibition of locus coeruleus in rats." Neuroscience. 77. 219-232 (1997)
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[Publications] Uno A, Takeda N, et al.: "Histamine release from the hypothalamus induced by changes in gravity in rats and its relation to space adaptation syndrome." Physiol.Behav.61. 883-887 (1997)
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[Publications] Kitahara T, Takeda N, et al.: "Changes in nitric oxide synthetase-like immunoreactivities in unipolar cells in the rat cerebellar flocculus after unilateral labyrinthectomy." Brain Res.765. 1-6 (1997)