1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09672299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福田 眞人 名古屋大学, 言語文化部, 教授 (90208968)
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Keywords | 性病 / 梅毒 / エイズ / 医学史 / 比較文化 / 病気 / 水治療法 / 風呂 |
Research Abstract |
性病の比較文化史的研究の第一段階として、梅毒の歴史的事実の分析・考察から着手した。その際、すでに研究成果のある結核の治療法としての温泉(鉱泉)療法の梅毒への応用を見、治療法としての入浴、また鉱泉飲用の社会史的、文化史的意義を検討した。 従来、梅毒の西洋社会での流行は、コロンブスのアメリカ大陸行に始まるとされてきたが、西アジアあるいは小アジア(トルコ)ですでにそれ以前から梅毒と同様の病痕が見られることから、その流行の原因あるいは発生の地の特定はまだ結論を得ていない。アメリカ大陸での風土病として存在していたのか、あるいは既に他の地域で存在していたのかを特定する作業が残っている。 一方、西欧社会での梅毒蔓延の理由の一つとして、大衆浴場における混浴の習慣があげられるが、その資料的跡付けを試みた。さらに、梅毒の流行により、患者の身体に生じた様々な症状の一つとしての皮膚病(皮膚の痒み等)が、結果的には入浴による治療法の導入をもたらし、それが中世で廃れた入浴の習慣を復活させた原因ともなったことを併せて検討した。 今後の展開としては、西洋社会における梅毒の蔓延過程の基礎資料の収集と、この病が東洋に拡散していく過程の検討、さらには幕末・明治維新当時の梅毒の蔓延状況と、国交の開始されたばかりの西洋列強諸国との梅毒を巡る外交的交渉の資料博捜と、その分析・考察に進む予定である。 また、これらの研究と並行して、淋病、下疳などの性感染症と現代のエイズに関する先行研究を渉猟し、梅毒との類似、差異を検討して、性病研究全体の輪郭を整える作業に従事することとする。
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Research Products
(2 results)