1998 Fiscal Year Annual Research Report
選手と支援スタッフとの関係に関するバイオエシックス的研究
Project/Area Number |
09680082
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近藤 良享 筑波大学, 体育科学系, 助教授 (00153734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友添 秀則 香川大学, 教育学部, 教授 (90155581)
片岡 暁夫 筑波大学, 体育科学系, 教授 (40015821)
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Keywords | スポーツ倫理学 / 自己決定(権) / パターナリズム / インフォームド・コンセント |
Research Abstract |
この研究は平成9年度〜平成11年度の3年間にわたる研究である。研究の中間年にあたる平成10年度は,前年度に収集した資料の精読が試みられた。自己決定権を重視する現代社会は自由主義が隆盛であるとは言え,全面的に自己決定を信頼できない状況にある。そのために自由主義の原則である「他者危害原理」に着目して自己決定権の適用条件を狭めることが試みられた。その1つは,現在の自己と未来の自己とを別存在に規定する方策であり,この条件によって未来の自己に他者性を付与して規制の対象とした。もう一方の方法は,自己の内部を二分する方法である。つまり,自己制御可能か否かを基準にして,自己制御可能/不可能を想定し,自己制御不可能な事柄に対しては,自己決定の範疇に入れないのである。前年度で判明した盲目的主従関係を対等/相互関係に引き戻す方向性には,放任的な選手の自己決定権が一人歩きする懸念がある。それを「自己の未来」「自己制御不可能」という条件によって規制できる可能性が示唆された。 年度の後半には,支援スタッフの倫理性についても考察し,厳密な意味での「インフォームド・コンセント」の重要性が指摘されると共に,被験者の募集に関しても十分な配慮が必要であること,さらに,ヒトや動物実験の遂行には事前審査制度の確立も求められた。遺伝子治療,臓器移植等の医療技術の進展が,スポーツ科学に波及することは疑う余地がない以上,支援スタッフの倫理性だけに依拠するのではなく,第三者からなる客観的な審査機構の創設が今後求められるだろう。
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