1998 Fiscal Year Annual Research Report
長距離走トレーニングが生体内活性酸素バランスに及ぼす影響
Project/Area Number |
09680130
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
伊藤 孝 日本体育大学, 体育学部, 教授 (70060788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊江 隆 国立公衆衛生院, 労働衛生学部・職業性疾患室, 室長
鈴川 一宏 日本体育大学, 体育学部, 助手 (10307994)
木村 直人 日本体育大学, 体育学部, 講師 (20225048)
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Keywords | 夏期強化合宿 / 好中球 / 活性酸素種 |
Research Abstract |
昨年度の調査では、強化練習後の回復がいかなる変化を示すか検討する必要性があるとの見解を得たことがら、今回は、強化トレーニング終了後の2週間における好中球機能の変化を検討した。 調査時期を夏期強化合宿の開催前後とし、長距離選手を対象として、合宿前、合宿中、合宿終了直後、終了3日後、14日後の5回の調査を行った。調査においては、身長、体重、体脂肪率などの形態的測定と、肘正中皮静脈からの採血を行った。採取された血液より、血清、血漿、および好中球を得た。好中球は比重勾配法により分離し、好中球機能として、活性酸素種産生能をルミノール及びルシゲニンを増感剤とした化学発光にて測定した。 ルミノール依存性化学発光は、合宿前と比較して、合宿中から合宿終了3日後にかけて顕著な上昇を示した。14日後には合宿直後よりも値が低値を示したものの、合宿前と比較して、有意に高い値を示した。一方、ルシゲニン依存性化学発光は、ルミノール依存性化学発光の変化とは異なる結果を示し、合宿中から合宿直後に見られる一時的な低下を除いては、合宿終了3日後を経過しても低下する傾向は見られなかった。ピークタイムの結果から、好中球機能は合宿後に亢進している可能性が示唆された。ルミノール依存性化学発光のピークタイムは合宿中に合宿前と比較して有意に延長し、合宿終了直後には合宿前を下回る値にまで短縮した。ルシゲニン依存性化学発光のピークタイムは、有意ではないものの、合宿前と比較して、合宿中に若干の延長を示し、その後合宿終了3日後までほとんど変化を示さず、14日後に合宿前の値と比較して10分以上短縮した。ピークタイムの結果から、ルシゲニンとルミノールで変化が異なるものの、合宿開始後から異物に対する反応性が低下していることが示唆された。ピークハイトの上昇およびピークタイムの短縮を好中球機能の亢進とするならば、今回の結果は、ピークタイムでは機能の低下を、ピークハイトでは機能の亢進と、逆の結果が得られたといえる。アスリートの易感染性は数多く報告されているが、今回のピークハイトの結果から得られた好中球機能の亢進は、それらの結果と逆を示すものであった。以上の結果をあわせ見ると、亢進した好中球機能は何らかの形で相殺されていることも考えられ、今後は、産生された活性酸素に対する抗酸化の物質もアスリートの易感染性に関与する因子として検討する必要があると考えられた。
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