1997 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける地域政策の展開と小売商業の地域システムに関する地理学的研究
Project/Area Number |
09680170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
伊東 理 帝塚山大学, 教養学部, 教授 (70116309)
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Keywords | イギリス / 小売商業の地域政策 / 小売商業の地域システム / 郊外地域 / タウンセンター / 小売商業の離心化 / 環境保護的アプローチ |
Research Abstract |
本年度は、おもにイギリスの地域政策(小売商業の地域政策)の変遷過程と小売商業の開発について検討してきた。その結果の概要は、以下のようにまとめられる。 1970年代末までの小売商業の地域政策の基調は、中心地理論を政策ベースとする既存の小売商業地区の階層的な地域システムを存続・強化することに主眼点が置かれてきたことにある。そのため、郊外地域(out-of-town)の小売商業の開発・立地は規制され、一方タウンセンターを筆頭に、既存の小売商業地区での再開発・拡張などの小売商業開発がさかんに実施されてきた。 1970年代末以降、ことにサチャー政権の誕生以降の1980年代からは、従来の政策はいわばなし崩し的に変更され、小売商業の地域政策の基本理念は、小売商業の立地規制(開発適地の制限)を中心とする小売商業開発のコントロールを緩和し、民間部門の活動を柱に開発を促進するスタンスに移行してきた。その結果、各種の大規模小売商業施設の発展、小売商業立地の多様化、小売商業の離心化などの進展によって、既存の小売商業地区の地域システムは大きく揺らぐこととなった。 1980年代末には、郊外化の急速な発展による既存の小売商業地区の衰退、明確な開発基準の欠如による混乱などの問題が顕在化し、小売商業の地域政策の課題として、既存の小売商業地区と新しいタイプの小売商業施設とのバランスをいかに保つか、という問題がクローズアップされることとなった。また、1990年代以降になって、車利用の抑制、公共交通を主体としたコンパクトな都市構造への転換といった環境保護的アプローチからも小売商業の地域政策の見直しが進められてきている。
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