Research Abstract |
ティーム・ティーチングという新しい教育方法による授業の展開が大きな成果を結ぶべきあり方について,大分県下および九州各県の算数数学の教員へのアンケート調査をもとに分析し、次の諸点を「ティーム・ティーチングの現状と課題」(1995,大分大学教育学部附属実践研究指導センター紀要,No13)において報告した. ・TTの実施教科としては,算数・数学での実施が圧倒的に多数である。 ・TTの授業での個性の明確化が十分とはいえず,教育現場では授業効果に確信をもっていない. きめ細かい指導に止まり,課題別学習など学習形態の工夫による積極的な展開があるとはいい難い. ・TTによる授業の評価方法が未開発のため,授業効果も必ずしも明確でない. 今年度は,上記のような課題意識のもとに,県教育委員会と2つの中学校の現場教師の協力を得て,数学のTTによる授業に参加し,教授活動や学習活動の観察と分析を重ねて,これまでに以下のような内容の把握している.一斉授業と個別補充指導とを組み合わせた中学校1年次の数学のTTによる授業では,主教諭と従教諭との協力型の授業であったが,そこでは生徒の能力や知識の個人差に対応したきめ細かな個別指導によって学習の基礎・基本を固め,学習態度を形成することに主眼をおいた教育目標に基づいてTTによる授業が熱心に展開されていた。その事象から ・その場その場でより詳細に一人ひとりの生徒の学習活動への取り組みを捉えて対応することから,生徒にはいつでも気軽に質問でき,授業内容が分かりやすくなり,学習がより着実に進展すること. ・2人の教師が互いに独立した発想による問題解決を示唆することによって,数学的な見方・考え方の面白さと多様さを学び,意欲的に学習活動を行おうとすること. ・生徒の予期せぬ反応への適切な対応は,指導内容に関して教師間に共通理解があって可能となること. ・生徒の関心に応ずる問題解決を支援し,能動的な学習態度の形成に資する学習態度の開発が十分ではなく,TTによる支援スキルの意識化と開発のもとで,授業評価の指標の多様化もはじめて進むこと. などの評価の実態と研究課題とが新たに見えてきた。だが,変容を見極めるのに長期の時間を求められている. また,TTによる授業を受ける中学校1年次の生徒の保護者にアンケート方式で感想を求めた結果,指導方法としてのTTについてその名称や目的を必ずしも理解していないが,自分の子供との対話を踏まえて複数の項目から選択してもらうと,生徒一人ひとりの理解の程度とつまずきに対応し,個別指導の機会が増えてどの子にも基礎・基本が身に付くような指導がなされることを強く期待しており,かなり多数の保護者がTTによる授業を今後もぜひ推進して欲しいと考えていることが判明した.
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