1999 Fiscal Year Annual Research Report
海外の日本語の新しい言語秩序-日系ブラジル人における待遇表現の新生-
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09680301
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
山下 暁美 常磐大学, 国際学部, 助教授 (10245029)
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Keywords | 日本語 / 日系ブラジル人 / 待遇表現 / 敬語 / 日系人 / 移民 / 日本語教育 / 継承 |
Research Abstract |
「お」・「ご」の使用、「丁寧度の異なる動詞」の使用ともに「性差」、「年齢」と相関関係が見られないことが明らかになった。言い換えれば、「老若男女」に関係なく、言葉が使われている。しかし、「世代」と「母語」については「丁寧度の異なる動詞」の使用との間に強い相関関係が認められた。「世代」をさかのぼるほど丁寧度の高い表現が選択される傾向がある。戦前の国語教育の歴史が垣間見られる。 3世のほうに5段階のぞんざいな表現を使用する傾向が見られる。しかし、ぞんざいな表現を使用するからといって、3世には相手に対する顧慮がないということは言えない。親愛の気持ちを表現している可能性はじゅぶんにあり、「ね」の多用がみられる。3世に近づけば近づくほど、階層差をわきまえることより、親愛の関係を強調することが人間関係にとって重要であると認識されているように思われる。「コロニア在住経験のある人」のほうが丁寧な段階の表現を使用している。コロニアにおいては戦前から皇民化教育としての国語教育がしっかりと行われていた。家庭内で学習された日本語とコロニア内の学校における国語教育の影響が見られる。 両親のどちらかが西日本出身である場合は「レル・ラレル」形の使用率が高い傾向にあるが、日系ブラジル人全体としても「レル・ラレル」形は今もよく使われ、共通語化の様子がうかがわれる。西日本、なかでも中国、九州地方を中心とした方言が生きていることからもこのことが裏付けられた。
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Research Products
(2 results)