1997 Fiscal Year Annual Research Report
洪水災害史からみた東海型3河川の洪水型の特徴と洪水防禦対策
Project/Area Number |
09680443
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
松本 繁樹 静岡大学, 教育学部, 教授 (90021881)
|
Keywords | 洪水 / 洪水災害史 / 東海型河川 / 富士川 / 大井川 / 天竜川 / 太田川(広島) / 堤防 |
Research Abstract |
本研究では、「東海型3河川」の下流平野をとりあげ、そこでの洪水記録を収集して洪水災害史を編み、それらの分析から「東海型河川」の洪水の特徴・特異性を明らかにし、また平野を開発する住民の側での洪水防禦対策についても究明しようとするものである。研究に当たっては、地理学的・地形学的視点のほかに民俗学的な視点もとりいれ、さらには北陸や中国地方の河川との比較・考察も行おうとするのが本研究の主目的である。 本年度研究者が行ったことの第1は、富士川についての洪水災害記録の収集と現地調査である。それによって、富士川下流平野についての洪水災害史を編んだが、これら記録を分析していくと、ここでの洪水・氾濫は、延宝2(1647)年と安政元(1854)年という2つの鍵となる年を境に、その発生場所が大きく異なっていたことが明らかとなった。前者は左岸にある巨大な「雁堤」が完成した年であり、後者は「安政東海地震」の発生した年である。第2に行ったことは、大井川における「大井神社」、天竜川における「諏訪神社」の分布と洪水発生地点との関係、および両平野における「屋敷神」の分布と洪水との関係の調査・分析である。これによって両平野では、その開発時に洪水との闘いの極限状態の中で、水防の神・治水の神が各所に勧請されていったことが明らかになった。第3に行ったことは、「東海型河川」の特異性を明確にするための、他の地域の河川との比較研究である。そのために選んだのは、類似性の予想される北陸の黒部・常願寺・庄川などの河川と、対照的であると思われる広島の太田川とである。調査の結果、それらとの間には強い類似性・異質性が認められたが、この点についてはなお別の川との比較が必要である。なお上記3点については、論文にすべく、目下鋭意分析中である。
|