1998 Fiscal Year Annual Research Report
大気汚染の及ぼす文化財への影響評価に関する研究-ブロンズ製鋳造品を中心に
Project/Area Number |
09680517
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
二宮 修治 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (30107718)
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Keywords | 大気汚染 / 影響評価 / 環境調査 / 文化財 / ブロンズ製彫刻 / アッシドライン / 金属暴露試験板 / リーチング試験 |
Research Abstract |
本年度は、青銅金属材料を中心に美術館内外の大気環境が材質に及ぼす影響について、環境調査をもとに検討した。昨年度に引き続き、大気中の汚染物質が及ぼす屋内外環境への影響を具体的に把握するために、大気、ミストおよび降雨中の汚染物質、とくに、火山ガスおよび海水塩類による劣化調査を行った。 金属試験板の暴露試験は、暴露材料として、市販されている(1)青銅(JIS-H5111 BC6)、(2)古銅(東大寺大仏殿屋根材の再現)、(3)銅(JIS-H-3100)、(4)炭素銅(JIS-G-3141)に、専門の鋳造家に依頼して作成した(5)東大寺八角灯籠の再現(Cu94% Sn2.5% Pb1% As2.5%)、(6)ロダンの青銅の組成(Cu94% Sn4% Zn1%)、(7)ロダンの青銅から亜鉛を除いた組成(Cu95% Sn5%)、(8)JIS規格の青銅(BC7)の4種類の青銅製試験板を加えて博物館内外で行った。曝露地点は、熱海MOA美術館、箱根美術館の各4カ所8地点である。 大気環境の計測は、金属曝露調査地点の熱海MOA美術館、箱根美術館および東京大学研究総合博物館の3つの美術館の内外と東京国立文化財研究所、東京学芸大学の屋上において行った。 大気汚染物質の地域的な特徴としては、東京都内と比較してMOA美術館、箱根美術館では、硫黄酸化物濃度が高く、窒素酸化物濃度が低かった。臨界地域である熱海では、海塩硫酸塩、火山地域である箱根では火山噴煙に含まれる硫黄化合物の影響が確認された。金属試験板曝露調査において、箱根美術館では、火山ガスにより黒変し、金属酸化物や塩基性塩類物質の生成、MOA美術館では、海水塩類により赤褐色化し、さん金属酸化物。塩化物の生成が確認された。その変化量と青銅金属中の亜鉛含有量との相関性については、次年度の長期曝露の結果により明らかにされるものと期待される。
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