1998 Fiscal Year Annual Research Report
ATP合成酵素におけるエネルギー共役機構の解明と回転モデルの検証
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09680622
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金澤 浩 岡山大学, 工学部, 教授 (50116448)
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Keywords | 生体膜エネルギー転換系 / エネルギー共役の分子機構 / 再構成ATPase / H+輸送性ATPase / Two-hybrid実験系 |
Research Abstract |
研究業績の概要:生物界に普遍的に存在しエネルギー獲得機構にとって不可欠なATP合成酵素(F_1F_o)は、8種のサブユニットからなる複雑な高次構造を持ち電子伝達系で形成されたベクトリアルな水素イオンの酵素内の移動をATP合成のエネルギー源とするというユニーク機能発現機構を有している。この酵素は逆反応としてATPを加水分解して得られるエネルギーを利用してH^+を排出するポンプ機能を有している。しかし、このエネルギー共役の機構の分子レベルでの解明はなされていない。本研究の目的は、大腸菌ATP合成酵素のF_1-ATPase部分のうち特にαβ複合体がγサブユニットを軸とするモーター構造を有することを、回転を視覚化することにより検証するための基礎的研究をすること。またモーターを形成するATPaseサブユニットの分子間相互作用を新たな手法をもちいて明らかにし、生物分子モーターの構造的実体を明らかにすることである。 本年度は、回転を可視化するための材料として固相に固定するATPaseの再構成系の確立を目指し、これに成功し論文とした(FEBS Lett.427,64-68、).すなわち、精製したα,β,Hisタグを付加したγサブユニットを作製し試験管内で再構成し、活性ある複合体を作製できた。この複合体は、固相に結合する事ができ高い活性を持つことから、これまで試みられていない、γを固定した回転の可視化が初めて可能となった。また最近本酵素の膜結合性サブユニットの一つであるbサブユニットの細胞質への突出部分をもつ融合タンパク質を作製し、これにも再構成を行う実験系を確立できた。これらの実験系を用いて当初の目的である回転の可視化の系を確立する目途がたった。一方、本酵素のなかで立体的なサブユニットの配置が未解明なストーク領域についてサブユニットの相互作用を調べるために新たに酵母を用いるTwo-hybrid系を確立してある(B.B.A.(1996)1274,67-72).この系を用いてbとδサブユニットの相互作用異常変異を分離することも可能となりすでに成果が出ている(論文準備中)。今後、本酵素のエネルギー共役の実体を理解する上でこれらの知見は有用となろう。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ekuni, A., 他: "Reconstitution of F1-ATPase actvity from Escherichia coli subunits α, β, and subunit tagged with six histidine residues at the C-terminus" FEBS Lett.427. 64-68 (1998)
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[Publications] Inoue, H., 他: "pH-dependent growth retardation by enhancement of a Na+/H+ antiporter activity of Escherichia coli : An application to isolation of antiporter defective mutants" Biological and Pharm. Bull.L1(11). 1128-1133 (1998)
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[Publications] Inoue, H., 他: "Expression of functional Na+/H+ antiporters of Helicobacter pylori in antiporter-deficient Echerichia coli mutants." FEBS Lett.443(1). 11-16 (1999)