1999 Fiscal Year Annual Research Report
医用ポリマー表面の分子化学的制御による特異な細胞応答性の発現機構の解明
Project/Area Number |
09680847
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
渡辺 昭彦 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助手 (30126263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 一彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (90193341)
岩崎 泰彦 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教授 (90280990)
中林 宣男 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (30014020)
鈴木 嘉昭 理化学研究所, 表面解析室, 技師
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Keywords | MPC共重合体 / 生体適合性 / 細胞培養 / たんぱく質吸着 / Neイオン照射 / サイトカイン産生 |
Research Abstract |
リン脂質極性基を有するポリマー(MPCポリマー)被覆表面のMPCユニットの量を変えることにより浮遊性の細胞に限らず接着依存性細胞においても細胞の接着を制御できることかわかった。吸水平衡に達したPMB30表面では生理活性たんぱく質の吸着が抑制され、細胞表面のレセプターが異物としてMPC表面を認識しないためと考えられる。PMB30上で接着できず浮遊している細胞は、休眠しているような状態にあると考えられ、適当な基質に播種しなおすと正常に接着・増殖することを確認した。材料表面に接着した細胞の機能を遺伝子発規から解析する手法を生体適合性評価に適用した結果、PMB30では細胞に与える刺激の目安となるサイトカインの産生が起こらないことがわかった。これは細胞側のレセプターがMPC表面を異物として認識しないためと解釈できる。この細胞の機能を追伝子発現から解析する新しい評価法は細胞の接着性、増殖率、形態変化から材料の生体適合性を評価する手法に代わる画期的な評価法であるばかりでなく、有用物質産生の指標を遺伝子発現のレベルで解析することに結びつく重要な成果といえる。イオンビーム照射法により材料表面に存在するMPCユニットの分布を制御し、局所的に細胞応答性の異なる材料を作成し繊維芽細胞の培養を行った。PMCユニットが多くイオンビーム照射を受けない領域では細胞の接着・伸展は認められなかった。イオン照射により表面のMPCユニットが失われた結果、生理活性たんぱく質の吸着がおこり、それを介して細胞の接着が起こるためと解釈される。以上のように、MPCポリマーをベースとして細胞応答性の異なる材料を作成し、生体適合性発現のメカニズムの解明を行なった。その結果、さらに優れた機能を有する新たな医用材料の創成、組織培養基材や培養法の開発の基盤となる情報が得られた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kazuhiko Ishihara: "Improved blood compatibility of segmented polyurethane by polymeric additives having phospholipid polar group. II. Dispersion state of the polymeric additive and protein adsorption on the surface"J Biomed. Mater. Res.. 32. 401-408 (1996)
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[Publications] 岩崎泰彦、他: "リン脂質組織化表面の構築と生体材料としての特性"東京医科歯科大学 医用器材研究所報告. 32. 14-22 (1998)
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[Publications] 渡辺昭彦、他: "MPC共重合体上での繊維芽細胞の接着及び増殖の制御"IONICS -イオンの科学と技術-. 24. 13-19 (1998)
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[Publications] Yasuhiko Iwasaki: "The effect of the chemical of the phospholipid polymer on fibronectin adsorption and fibroblast adhesion on the gradient phospholipid surface"Biomaterials. 20. 2185-2191 (1999)
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[Publications] 渡辺昭彦、他: "MPC共重合体上での培養細胞の挙動の制御"東京医科歯科大学・生体材料工学研究所報告. 33. 34-39 (1999)