1997 Fiscal Year Annual Research Report
前漢における儒教の国教化と『論語』の伝承・解釈に関する研究
Project/Area Number |
09710007
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
ゆはず 和順 北海道大学, 文学部, 助教授 (80210590)
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Keywords | 漢代思想 / 儒教の国教化 / 『論語』 / 『論語』の解釈 |
Research Abstract |
本研究の目的は、儒教の代表的文献である『論語』中の字句が、漢代の思想的文献において、どのような場面で引用され、どのような意味に解釈されていたかについて、個々の事例を具体的に検討し、ひいては漢代学術思想の特質を解明する点にある。 その研究の基礎作業として、本年度は、まず東京大学東洋文化研究所において『論語』を中心とする漢籍資料の文献調査を行った。同時に、その中から重要な文献資料を蒐集し、北海道大学文学部中国哲学研究室在籍の学生・院生の協力を得て、それをワープロ入力し、データ・ベース化を図った。 その上で、『論語』各章について、漢代の特徴的な解釈が見られるかどうか、検討を行ったところ、漢代の『論語』解釈は、春秋公羊学の思想と密接な関係があることが明らかになった。 一例を挙げれば、『論語』子罕篇「鳳鳥不至」章の解釈の問題について考察を加えた。同章の漢代の解釈は、従来、顧みられることが少なかったが、今回の考究によって、当時は、少なくとも二通りの解釈が併存しており、どちらといえば、現在、通説と認められている解釈よりも、春秋公羊学の影響を受けた、いわば異説の方が、一般的に行われていたことが判明した。また同時に、当時流行した解釈が、その後、衰退したのは、後代、誤って伝写された事実に起因することも、敦煌より発見された唐代のテキストと比較・検討することを通して、実証できた。 以上の研究成果は、平成9年12月開催の北海道中国哲学会十二月例会において、「漢代の『論語』と春秋学」と題して口頭発表を行った。平成10年は、その原稿に基いた研究論文を学術雑誌に発表する予定である。
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