1997 Fiscal Year Annual Research Report
「不在」意識と美術表現との関連解析及びそれに基づく表現展開の研究
Project/Area Number |
09710027
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
伊東 敏光 広島市立大学, 芸術学部, 助手 (40275425)
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Keywords | 不在の存在 / 意識の形象化 / 記憶の再構築 / 現実とイマジネーションの境界 / 作品と鑑賞者を結ぶ共通意識 |
Research Abstract |
本研究は平成9年度と平成10年度の2ヵ年間で行うものであるが、平成9年度は研究対象作家及研究対象作品の調査、分析を中心に研究を進めた。本研究では、作家の創造性を生むものとして「不在」意識が大きな役割を果たしているという視点から作品を調査し、個々の作家における「不在」意識、またすべての創造性に関わる共通の「不在」意識の存在について考察している。 1950年生まれのイギリス人彫刻家アントニ-・ゴ-ムリ-Antony Gormleyは人型の表面を鉛張りした彫刻で知られる作家であるが、ここでは彼のドロ-イングに注目した。ドロ-イングも彫刻と同様、ある男がごくシンプルな状況下に描かれているものが多いが、その中で一つの人型からもう一つ人型が抜け出している様子がしばしば描かれている。ゴ-ムリ-にとって一つの人型は身体や意識を形象化したものであり、もう一つの人型は身体や意識の抜け殻であろう。彼の彫刻はこの抜け殻を表現したものであり、言い換えれば、身体や意識不在の人型容器と言えよう。 その他、過ぎ去った幼児期の記憶を、時間や空間ごと再構築することを試みている1911年パリ生まれの女性彫刻家ルイーズ・ブルジョアLouise Bourgeoisをはじめ、ヤン・ファーブルJan Fabre、ジゥゼッペ・ペノ-ネGiuseppe Penone、ヤニス・クネリスJannis Kounellisu、ヨセフ・ボイスJoseth Beuys、ウィレム・デ・ク-ニングWillem de Kooning、、若林 奮、等20世紀後半から現代に活躍する作家についてインタビュー資料の収集を含め調査、研究を行っている。同時に研究資料から考察し、そのなかで本研究者が強く共感できる部分を造形化(物質化)する、不在意識の作品化実験とそのプロセスの研究を行っている。
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