1997 Fiscal Year Annual Research Report
物体の構造の認知における部分情報と全体情報の相互作用に関する研究
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09710049
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋木 潤 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 助手 (60283470)
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Keywords | 物体認知 / 部分 / 全体 / 視覚的注意 / 形態知覚 / 知覚的体制化 |
Research Abstract |
1.物体の部分と全体に対する選択的注意の効果を心理実験を用いて検討した.特に,複雑な凹図形が全体として一つの物体として選択的注意の対象となるかを検討した。L字形と長方形の部分を組み合わせた箱形のパタンの2ヶ所に付加された線分の数の比較判断課題において,反応時間は2つの部分が結合している時のほうが分離している時よりも速く,また,線分が単一部分に付加されているほうが異なる部分に付加されているときよりも速かった。これは,パタン全体,部分ともに選択的注意の対象として比較的独立に機能していることを示唆する.また,線分の呈示に遅延を与えると全体に対する注意効果が消失することから,全体と部分に対する注意は異なる時間特性を持つことが示唆された. 2.物体ベースの注意メカニズムにとっての物体の表象の性質を探るために,物体ベースの注意効果と物体の幾何学的特性,及び,物体の表面属性の効果を検討した.研究項目1より,複雑な凹図形全体が選択的注意の対象になることはわかっているが,さらに,複雑な図形の位相幾何学的複雑性と選択的注意の関連を調べた.単純な位相構造を持つ図形(長方形をJ字形に組み合わせたパタン)と複雑な構造を持つ図形(H字形のパタン)を用いて,線分数の比較判断課題を行った.その結果,J字形のみが全体として注意の対象となることが明らかになった.さらに,この全体に対する注意の効果は,パタン全体のテクスチャが均質である場合のみ認められた.以上の結果から,注意システムが対象とする物体の表象は,形態情報を含まない均質な結合領域ではなく,単純な位相構造を持つ均質結合領域に限定されると考えられる.このことは,知覚システムが,形態情報に基づく領域の分節化を非常に早い段階から行っていることを示唆するものである.次年度は,さらに近く情報の体制化における物体の幾何学的特性の役割を検討していく予定である.
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[Publications] Saiki, J. & Hummel, J.E.: "Connectedness and the integration of parts with relations in shape perception" Journal of Experimental Psychology : Human Perception and Performance. 24. 227-251 (1998)