1997 Fiscal Year Annual Research Report
対人関係における葛藤が親密化過程と自己確証過程に果たす役割について
Project/Area Number |
09710102
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
下斗米 淳 専修大学, 文学部・心理学科, 講師 (60226280)
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Keywords | 対人関係 / 親密化過程 / 役割行動 / 友情 / 児童期 / 青年期 / 成人期 / 類似・異質性認知 |
Research Abstract |
本研究では,対人関係の親密化過程を生起させているメカニズムを3位相説(下斗米,1990,1991,1992)に基づいて検討するために,まず現代の親密な対人関係の実態を把握することを目的とした.中学生・高校生・大学生・社会人という年齢範囲を対象に,現代の親密な対人関係の実態とその特質について,「行動期待尺度」(下斗米,1991)等からなる質問紙調査によって検討した.その結果,1.いずれの層においても,支援性・自律性・類似性・娯楽性・近接性・力動性という6種類の役割行動型が共通に見出され,尺度構造の一般化可能性と,現代の対人関係の実態把握における有用性が示された.その上で,親密化過程の実態を検討したところ,2.中学生から大学生までの生徒・学生層では,対人関係を“親友か否か"と“遊び友達か否か"の2つの観点から評価しようとするのに対して,社会人層では“顔見知りか否か"と“遊び友達か否か"に明別し捉える傾向が見受けられた.しかし3.中学生層においては,親友・遊び友達いずれに対しても,力動性を筆頭に,娯楽・近接・類似性という学業や趣味上の課題を介在させた表層的相互作用から対人関係の親密さを評価する傾向が窺われた.これに対し4.高校生層では,親友に対しても娯楽性という“軽躁"な要素が最も重視される傾向であった.遊び友達においては依然近接性・支援性・類似性・娯楽性が評価の観点になっているが,親友に対しては自律性・支援性という“人格的"要素も評価に加えられ,異なる観点で明別し始める傾向が見出された.5.大学生層になると,支援性・力動性など“個"の確立に基づく相互依存関係をもって親密な対人関係であるか否かを捉えるようになり,6.社会人層においては,“顔見知り"に対して特定な役割期待を適用して評価する一方,“友人"には他者への理念的期待に関わりなく,現状の不都合の有無から捉えるという2重の評価次元を有する傾向が見出された.
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