1997 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀アメリカ合衆国における黒人選挙権の総合的研究
Project/Area Number |
09710270
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小原 豊志 山口大学, 人文学部, 助教授 (10243619)
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Keywords | 黒人選拳権 / 自由黒人 / アンテベラム期 |
Research Abstract |
本研究は二年間にわたって、19世紀アメリカ合衆国における黒人選挙権問題の展開を追跡することにより、南北戦争を画期とする同国の黒人間題の歴史的展開を考察しようとするものである。今年度はその研究計画の前半部として、南北戦争以前期における非奴隷身分の黒人(自由黒人)の選挙権問題について検討した。その結果、この時期の黒人選挙権問題は白人選挙権問題と密接な関連を有しつつ展開していたことが明らかになった。すなわち、周知のように合衆国においては19世紀前半期に大半の州において白人男子普通選挙権が実現したのであるが、自由州においても、奴隷州においても黒人選挙権はこれに連動して拒絶される傾向にあったのである。つまり、東部の旧州においては財産資格および納税資格の撤廃によって選挙資格が緩和されると同時に従来容認されていた黒人選挙権が多くの州で拒絶されたのであり、西部の新州においては当初から白人男子普通選挙権と黒人選挙権の拒絶とがセットになって規定されていたのである。報告者はこうした現象を、選挙権の階級性を解消すると同時に選挙権に人種性を構築することによってこの権利を白人の特権たらしめようとした白人民衆の人種意識を反映したものと考え、上記の過程を「選挙権における白人性の確立過程」と把握した。したがって、かかる人種意識が濃厚である限り黒人選拳権は奴隷州、自由州を問わず総じて否定されざるを得なかったのである。 それでは、南北戦争後の1870年に選挙権における人種差別を全面的に禁止した合衆国憲法修正第15粂はいかなる過程を経て成立したのであろうか。また、この条項の「実効性」はいかなるものであったのか。来年度はこれらの問題を中心に考察する。
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Research Products
(1 results)