1998 Fiscal Year Annual Research Report
レベッカ・H・ディヴィスと「アメリカ自然主義」の水脈
Project/Area Number |
09710349
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大矢 健 明治大学, 理工学部, 講師 (30244403)
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Keywords | ジャンル / 自然主義 / モダニズム / ローカル・カラー / ジャック・ロンドン / レベッカ・ハーディング・デイヴィス / テクノロジー / 合理化 |
Research Abstract |
レベッカ・ハーディング・ディヴィスを中心にすえて、ジャック・ロンドンとシャーウッド・アンダスンをそれぞれ自然主義とモダニズムの二つのジャンルの基点と見立て、この期間の文学を考察することを、本課題は目標とした。南北戦争から第二次世界大戦までの期間に、アメリカはワールド・パワーへの道をひた走ったが、それを文学がどう見て、また、その時代の流れのなかで文学がどう作られたか、を見てみようというプロジェクトである。ローカル・カラー、自然主義、モダニズムと時代順にジャンル分けし、作家たちを基本的に一個の変わらない要素と見てそのカテゴリーに分類するという従来の見方と違った見方、「自然主義の水脈」というより大きなパースペクティヴに作品群を収め、これらの作家を、たとえば「身体」あるいは「自然」というタームで系統的・歴史的に考察したいと考えたわけである。 部分的な成果に、ロンドンの「南海もの」の分析(拙論「ジャック・ロンドンの南海作品群とアメリカ帝国主義」)と、電化の社会・文化への影響を分析したもの(「世紀転換期の電化された人々」)を挙げることができる。前者においては、アメリカ帝国主義が合理化を推進しハワイを植民地として併合した時代の文学が扱われている。人の再生産とモノの再生産がほぼ同質の行為とされ、その結果、歴史・時間の概念が数字化されて無効化されるプロセス、親・子という個人のアイデンティティーの根元といってよい関係が視覚化されて、逆説的に抹消される事態、すなわち空虚な自己の生産プロセスを論考することが出来た。後者においては、狭義の「自然主義」においてという限定つきではあるが、テクノロジーが自己の空洞化に荷担したさまを概説的に論考している。 残念ながら目標どおりの成果とはいえない。なにより、準備はかなり進んでいるものの、デイヴィスについての論考をまとめなければならない。今後の大きな課題である。
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Research Products
(1 results)