1997 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳文学の可能性-日本文学海外受容史と翻訳作品再評価の試み
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09710386
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北村 結花 神戸大学, 国際文学化部, 助教授 (10204918)
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Keywords | 翻訳文学 / 日本文学受容史 / 日本古典文学 |
Research Abstract |
日本文学の翻訳について、記紀万葉から現代文学(村上春樹、吉本ばなななど)に至る諸作品の英訳の歴史の把握や原文との内容・文体比較、及び、日本文学の海外における享受の現状(翻訳の普及度や教育カリキュラムへの組み込まれ方など)の考察を行い、1、「タニザキ・カワバタ・ミシマ」の時代を経て、古典から現代まで幅広いジャンルの日本文学作品が次々と翻訳され、その傾向は現在も継続中であること、2、翻訳作品の質は翻訳者によりかなりの格差があり、原作の内容変更が登場人物の名前、会話の内容、ストーリーなど数多くの局面で行なわれていることが明らかとなった。また同時に、日本における翻訳史を主として英米文学の翻訳作品を中心に考察し、西洋文化理解の必要に迫られた明治期の翻案・翻訳から、英語による日本人の作品が翻訳され逆輸入される現状までを把握することができた。 日本から/日本へ、いずれの場合も、翻訳史に日本文学のボーダーレス化の過程を見ることができたが、そうした歴史を踏まえつつ、来年度は日本古典文学の翻訳史について作品を絞って考察を進めたい。具体的には「源氏物語」の英訳・現代語訳を取り上げ、1、出版当時の文学・社会状況との関連、2、原作との内容・文体比較、3、翻訳作品の文学作品としての意義、文学史への組み込みの試み、などに焦点を当てながら、日本文学を代表する作品として世界で評価されている「源氏物語」の翻訳について検討を試みたい。
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