1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09730001
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
嶋 恵一 弘前大学, 人文学部, 講師 (90281914)
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Keywords | 設備投資 / 資金調達 / 貸出市場 / 情報非対称性 / エイジェンシー関係 / 信用割当 / メインバンク / 委託されたモニター |
Research Abstract |
本稿では、企業の投資行動と借入資金との関係についての実証的分析を行った。両者の関係について、特に借入資金に注目するのは次のような理由がある。第一に、借入金は、日本の場合、投資の外部資金の主たる調達手段であること、そして第二に、貸出市場の資金需給面で見ると、市場での情報非対称性や資金需給者間のエイジェンシー関係を反映して、借手企業は追加的費用あるいは割当を課される可能性が考えられることである。したがって、借入資金は企業の投資決定に最も密接に関わる外部資金といえる。 本稿は上場企業(機械業種)180社による1983-1991年のプールデータを用いて、企業の投資行動と借入資金調達との関係を回帰分析によって検証した。分析結果を要約すると、貸出市場の信用割当/借入金制約によって企業の投資水準は過少に拘束される、と同時に、企業が借入資金を利用することによって過大な投資を行う、という2つの傾向が見られる。これは、貸出市場全体の情報不完全性・非対称性によって企業の借入資金が制約されること、なおかつ、資金需給のエイジェンシー関係が企業にモラルハザードへの誘因をもたらすこと、を同時に反映した結果と見られる。特に後者については、先行する実証分析では殆ど触れられてこなかったことである。 そして3つめの傾向は、メインバンク関係は貸出市場の情報非対称性を緩和すると同時に、エイジェンシー費用の削減をもたらす、という特徴である。これはメインバンク機能に関してかねてから理論的に主張されてきた「委託されたモニター」の役割と整合的な結果である。
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Research Products
(1 results)