1997 Fiscal Year Annual Research Report
試料回転の干渉効果を利用した四極子核に対する固体高分解能NMR法の開発
Project/Area Number |
09740416
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中井 利仁 筑波大学, 物理工学系, 講師 (20212079)
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Keywords | NMR(核磁気共鳴) / 四極子核 / DOR(二重回転)法 / 異方的相互作用回復 / Floquet理論 / 干渉効果 / 固体 / 高分解能 |
Research Abstract |
7Li、27Al、75Asなど四重極モーメントをもつ原子核-いわゆる四極子核-に対するNMR(核磁気共鳴)分光法は、材料科学における物質の同定・構造解析など広い応用が期待されている。この期待に応えるものは、固体ならではの結晶系における分子の向き・結晶場の対称性といった情報を与え、しかも溶液NMRのように個々の非等価な核ごとに情報を分離する、『固体高分解能NMR分光法』である。本研究では、一見相容れないこれらの方法を統合することにより、理想的な方法を実現する。すなわちDOR(二重回転)法によって個々の四極子核の情報を得るが、そこに本来のDOR法では除去されてしまう異方的(四重極)相互作用を部分的に回復させることで、結晶場などの情報をも盛り込むというものである。 本研究ではまず、DOR法を実現できるNMR装置が必要である。本年度はDOR装置の設計および製作を行なった。この装置は、試料を入れたローターと呼ぶ小容器を数kHzの高速で回転させ、さらにその回転軸を1kHz程度ですりこぎのように回転(才差運動)させるものである。本研究の目的を達成するために必要な、両回転運動の整数比周波数が実現されるように現在、実験条件などの調整を行なっているところである。 一方、物質構造の情報の詳細を決定するためには、実験結果と理論の予測の比較が必要であり、異方的相互作用回復のメカニズムを説明する理論としてFloquet理論と呼ばれるものが有効である。本年度はこの理論の整備を行ない、雑誌Molecular Physicsに発表した。 平成10年度はこれらの実験・理論的整備を受けて、研究課題の異方的相互作用を反映した四極子核に対する高分解能NMRスペクトルの観測と解析を達成する見込みである。
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Research Products
(1 results)