1997 Fiscal Year Annual Research Report
数理モデルを用いた森林樹木による降雨水質変化過程の定量化に関する研究
Project/Area Number |
09750599
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉田 弘 徳島大学, 工学部, 助教授 (10210717)
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Keywords | 森林水文 / 水質水文 / 降雨遮断 / 降雨水質 / 樹冠通過雨 / 樹幹流 / lcaching / 酸性雨緩和 |
Research Abstract |
森林樹木による降雨水質調節機構の定量化において、特に枝葉や幹から物質が雨水中へと溶脱されるリーチング過程に焦点を当てて、簡易降雨シミュレータによる屋内降雨水質観測実験を行い、降雨遮断過程におけるリーチング量の実測と数理モデル化を試みた。 約5年生のスギとクスノキを対象とし、簡易降雨シミュレータにより約10mm/hrと約20mm/hrの一定降雨強度となるように電気伝導度が0.5 μ S/cm以下のイオン交換水を降らせて降雨水質観測実験を実施した。このとき、林外雨量、樹幹通過雨量および樹幹流下量の経時変化を転倒マス式雨量計で観測するとともに、各雨水試料を最短5分間隔で採取して水質分析に供した。その結果、樹幹流ではスギとクスノキの樹種を問わず、pHとECの両方について林外雨よりも増加した。この傾向は降雨強度が小さい場合ほど大きいことが分かった。しかしながら樹冠通過雨では、林外雨と比較して明瞭な変化は認められなかった。 代表的な陽イオン濃度の経時変化について検討したところ、樹幹流に関して、スギではマグネシウムイオンが、クスノキではカリウムイオンがそれぞれ卓越して林外雨濃度よりも大きかった。樹幹流下強度が安定する約60〜90分以後では、いずれの樹種のイオン濃度とも安定した。定常な降雨状態の実験であることから枝葉に付着した水分量もほぼ定常と考えられる点と、イオンの供給が樹木の表面上以外では考えられない点から、樹冠付着水量が一定の場合にリーチング量も一定となることが示された。ただし、リーチング量と樹冠付着水量との関係は必ずしも線形的とはいえないことから、リーチング量は樹冠付着水量のべき乗関数としてモデル化可能であることが示唆された。陰イオンについては林外雨に対して濃度変化が認められなかったことから、リーチングされなかったと判断された。
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