1997 Fiscal Year Annual Research Report
レトロウイルス複製に伴う組み換え突然変異体の生成機構とその病原性に関する研究
Project/Area Number |
09770200
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 聡 東京大学, 医科学研究所, 寄付研究部門教員 (60291308)
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Keywords | レトロウイルス / ウイルス複製 / 多重変異体 / junD / トランスフォーメーション / ウイルスベクター / 癌遺伝子 / 分子生物学 |
Research Abstract |
マウスjunD遺伝子のトランスフォーミング変異体であるT1・T2は、レトロウイルス複製の過程で組み変えによって生成したもので、JunDの領域2の16アミノ酸がそれぞれ3回及び5回タンデムに繰り返した構造をしている。この変異体の生成機構と細胞に及ぼす病原性との関係を調べるため、本年度は実施計画に基づき以下の研究を行った。まず、合成DNAを用いてこの領域が2回繰り返した変異体(T0.5)を新たに作製し、junD・T0.5・T1・T2をニワトリ胚線維芽細胞(CEF)で発現させ、フォーカスの出現時期及び数を指標としてそれぞれのトランスフォーメーション活性の強さを検討した。その結果、junDではフォーカスを形成しないが、その他の変異体では繰り返し回数が多いほどフォーカスは早く出現し、その数も多いことがわかった。T1を複製能完備型ニワトリレトロウイルスベクターへ組み込んだ後、CEFでこのウイルスを通常の培養条件で増殖させると、ウイルスの複製サイクルが2〜4回まわったと推定される5日間の培養の間に、繰り返しの回数が3回から2回へ減少したjunD変異遺伝子を持つウイルスが出現し、全体の半分以上を占めるようになった。つまり、ウイルスの複製サイクルにおいて繰り返し回数の多い変異遺伝子は不安定であり、複製時の突然変異により繰り返し回数は減少して行く傾向にあることがわかった。しかし、同じウイルスベクターを感染させたCEFに軟寒天をかぶせ、強くトランスフォームした細胞の増殖が他の細胞よりも有利になる環境をつくると、繰り返し回数が3〜4回のものが優勢となった。このことを総合すると、生体内で増殖する病原性ウイルスにおいて、ウイルス複製時には不安定でありながらも、プロウイルスとしては細胞に与える病原性によりむしろ安定に保持されるという現象があり得ることがわかった。
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Research Products
(1 results)