1997 Fiscal Year Annual Research Report
膵液中トリプシンの活性化とその膵管内および血中の動態に関する研究
Project/Area Number |
09770353
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中江 康之 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 助手 (50273199)
|
Keywords | α2-macrogrobulin-trypsin複合体 / 急性膵炎 / 石灰化慢性膵炎 / 重症度 / 膵液 |
Research Abstract |
【目的および方法】血中へのα2-macrogrobulin-trypsin複合体(α2M-T)の出現は膵内あるいは膵管内でのトリプシノーゲンの活性化を反映する。この活性化は、膵炎による膵の急性炎症や膵石症における膵管内膵液うっ滞で起こると考えられる。そこでα2M-Tに対するモノクローナル抗体を作成し、ELISAによる膵疾患の血中α2M-T様物質(α2-macrogrobulin-trypsin complex-like substance:MTLS)濃度の測定を行い、その意義を検討した。 【結果】血中MTLS濃度は、健常者(3.6±1.8ng/ml,n=44)に比し、重症急性膵炎(342.2±367.0ng/ml,n=5,p<0.01)、軽症急性膵炎(108.8±210.0ng/ml,p<0.01)、石灰化慢性膵炎(71.0±189.5ng/ml,n=26,p<0.05)で有意に高値であったが、非石灰化慢性膵炎(17.8±22.8ng/ml,n=12)および膵癌(3.6±1.8ng/ml,n=15)では有意差を認めなかった。急性膵炎では重症例が軽症例に比し有意に高値であり(p<0.01)、異常率も高かった(100% vs 62%)。石灰化慢性膵炎では、膵管内膵液うっ滞のある例(162.4±271.7ng/ml n=11)がうっ滞のない例(3.0±2.0ng/ml,n=10)に比し有意に高値であった(p<0.05)。MTLSのアミダーゼ活性をみると、急性膵炎は高値を示したが、石灰化慢性膵炎では活性が認められなかった。 【結論】血中MTLS濃度の測定は、急性膵炎の重症度や膵石症における膵管内膵液うっ滞といった、膵疾患における病態判断に有用であると考えられる。急性膵炎と膵石症のアミダーゼ活性に差が認められ、複合体の動態が異なっている可能性が示唆された。
|
Research Products
(1 results)