1997 Fiscal Year Annual Research Report
上部消化管に発現するクラスIVアルコール脱水素酵素の食道癌の発症機序における意義
Project/Area Number |
09770376
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松本 道長 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (60265816)
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Keywords | クラスIV ADH / 食道癌 / 亜鉛欠乏 / ニトロソベンズアミン / ニトロベンズアルデヒド / N-メチル-N-α-アセトキシベンジルニトロソアミン |
Research Abstract |
ニトロソベンズアミン代謝におけるクラスIVアルコール脱水素酵素(クラスIV ADH)の役割を検討し食道癌の発症機序の一側面を明らかにする目的で研究を開始した。食餌中に含まれるニトロソベンズアミンは食道のミクロゾームで中間代謝物に代謝され、その中間代謝物はニトロベンズアルデヒドに代謝される一方、強い発癌性を示すN-メチル-N-α-アセトキシベンジルニトロソアミンにも転換される。また亜鉛欠乏がヒトにおいては食道癌発症の一因であることが疫学的に推測されている。クラスIV ADHは食道における活性が高く、ニトロベンズアルデヒドに高い親和性を示し、亜鉛要求性の酵素である。そこで食道のクラスIV ADH活性に及ぼす亜鉛欠乏の影響を検討した。体重150gのウィスター系雄性ラットを用い、亜鉛欠乏食または50ppmの亜鉛を添加した対照食で6週間飼育した。飼育後両群より食道粘膜を採取し、クラスIV ADH活性を測定した。その結果両群の血清中の亜鉛濃度は対照群に比し亜鉛欠乏群で有意に低く(490±242 μg/dl vs 127±15μg/dl : p=0.004)、またクラスIV ADH活性も対照群に比し亜鉛欠乏群で有意に低かった(11.3±3.2nM NADH酸化/min/mg vs 6.4±1.6nM NADH酸化/min/mg : p=0.03)。以上の検討より亜鉛欠乏は食道粘膜のクラスIV ADH活性を減弱させ、そのことにより食道粘膜におけるニトロベンズアルデヒドの代謝が障害され、ニトロソベンズアミンからN-メチル-N-α-アセトキシベンジルニトロソアミンへの形成を促進させる可能性が推測された。(研究代表者は上記研究内容を第83回日本消化器学会総会で発表した。)現在亜鉛欠乏ラットおよび対照群をニトロソベンズアミン食で飼育中であり、両群における食道癌の発症率および食道組織中のN-メチル-N-α-アセトキシベンジルニトロソアミン量を今後比較検討していく予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 松本道長: "亜鉛欠乏の食道粘膜のクラスIVアルコール脱水素酵素活性におよぼす影響" 日本消化器病学会雑誌. 94巻:臨時増刊号. 228- (1997)
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[Publications] 松本道長: "ヒト胃粘膜におけるクラスIVアルコール脱水素酵素活性、および局在の検討" アルコールと医学生物学. 17巻. 22-28 (1997)
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[Publications] 横山裕一: "新しいアルコール脱水素酵素遺伝子(ADH7)とその生理的意義" 蛋白質核酸酵素. 42巻.1号. 42-49 (1997)
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[Publications] M.Matsumoto: "Aging causes reduction of class IV alcohol dehydrogenase activity in human gastric mucosa" Alcoholism:Clin.Exp.Res. 21.Supple. 52A- (1997)